“隠遁生活”から現場復帰しWBC制覇 米国を初優勝に導いた72歳監督の手腕

招集選手の限界、起用の制約がある中で勝ち取った優勝

 大会規定の球数制限以上に、選手個々が所属するMLBチームから言い渡される起用に関する制限が多く、日本と戦った準決勝前には3チームの投手コーチと連絡を取り、起用法について相談したという。イニング数、球数、連投の可否など、さまざまな制約がある中でも、選手の入れ替えが可能な新規定を利用しながら、やり繰りした監督の手腕はさすが。招集したい選手をすべて揃えられたわけではない中で手にした優勝は、より大きな達成感を与えたのかもしれない。

 優勝決定後、特設ステージで優勝カップを授与されたリーランド監督は「代表監督、代表コーチ、代表選手は、みんな国を代表できたことを誇りに思う」と話すと、涙ぐみ言葉を詰まらせた。監督室ではタバコを燻らせ、ユニフォームの着こなしはオールドスタイル。どこまでも昔気質の監督は、優勝後の記者会見で最後に「野球の母国に初優勝をもたらした感想は?」と聞かれると、笑いながら言った。

「だから言っただろ、アメリカを再び偉大にしようとしただけだって(笑)。みんなありがとう。みんなも楽しんでくれたことを願うよ」

 それじゃ、また、とばかりに片手を挙げて会見室を出ていったリーランド監督。4年後、再びユニフォームを身にまとって会見室に登場するのか。それは誰にも分からない。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

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