44歳元燕ドラ1右腕の今 カラオケ店勤務経て辿り着いた第2の人生とは

最近は安定志向の学生も増加、「野球のスタイルも違います」

 日大野球部で学生コーチを務めている石井辰哉さんも北川さんからアドバイスを受ける学生の一人だ。

「具体的な職種はまだ決めていませんが、営業の仕事を希望しています。野球はコミュニケーションが取れないとできません。学生コーチは、選手のちょっとした仕草や表情で、ケガをしていないか声をかけることがあります。野球で培った気遣いやコミュニケーション力を生かせればと思っています」

 3年の秋に選手から学生コーチに転身したという石井さんに、北川さんは「レギュラーになれないから退部するのではなく、学生コーチとして選手の役に立つ仕事を選んだ。途中で辞めずに、最後までやり通すことができる石井くんは、企業からも声がかかるはずですよ」と期待を込める。

 北川さんによると、野球を続けることにこだわる学生がいる一方で、最近は真面目で先を考え、安定志向の学生も多くなっているという。

「野球のスタイルも違いますね。昔はケンカ野球でしたけど、今は怪我をしないようにプレーしています。時代の違いでしょうか。大手に勤めれば、安定しているし両親の期待に応えられるかもしれない。でも勤めるのは自分です。自分に合った仕事を見つけてほしいと思います」

 週末には、コーチを務める東京都大田区の「城南ボーイズ」で子供たちに野球の楽しさを伝えている北川さん。学生たちに自らが味わった厳しい環境を伝えるだけでなく、野球の面白さも子供たちに教える第2の人生は、忙しい毎日のようだ。

【了】

篠崎有理枝●文 text by Yurie Shinozaki

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