「ないのは“自信”だけ」―大体大浪商が目指す春の頂点、その先に見据える夏

指揮官がにじませる自信「このチームには全国で勝てる力があると思う」

 今春の練習試合ではチームの方針で控えだった田村篤史や2年生右腕の立石健がマウンドに立ち、経験を積んだ。田村は宮本と同じように切れのある速球を武器にし、スピードも130キロ後半をマークする本格派左腕。この日も先発のマウンドに立ち、6回3安打1失点でバトンをもらった。伸びのある速球で空振りを奪うなど、田村の周囲の評価は上がる一方だ。そんなライバルの成長を同じチームメイトとして喜びながらも、やはりエースとしての意地もある。

「2人の存在は頼もしいし、夏は1人のピッチャーでは勝ちきれない。でもエース番号を背負っているのは自分なので、やっぱり自分が最初から最後まで投げ切りたいという気持ちはあります」と力強く言い切った。

 3月から始まった練習試合では滋賀学園、高岡商と選抜出場校を撃破しただけでなく、27日の練習試合以降、チームは対外試合で黒星を喫していない。「これだけやって来られているのだから、このチームには全国で勝てる力があると思う。しいて挙げるとすれば、チームに今ないものは“自信”だけでしょうね」と四田監督は言う。

 履正社の竹田とは、年末に社会人チームの練習を見に行った時に偶然その場で出会った。その時に見た竹田のがっちりした体型が目についた。「自分もあんなに大きい体になりたいと思いました。正直、うらやましかったです」。昨秋に投げ負けたライバルに敬意を表しつつ、自分も追いつき、追い越したいとの思いで冬の練習に耐えてきた。

 今春の選抜では昨秋の練習試合で7回1失点に抑えた大阪桐蔭と、その履正社と同じ府内のライバルが決勝の舞台に立った。「すごくレベルの高い試合でした。あの2校を中心に、自分たちも注目してもらっているのはありがたいです。でも自分たちはその2校に勝って甲子園に行くのが目標です」ときっぱりと口にした。

「同じ大阪のライバル校が甲子園の決勝の舞台に立つなんて、大阪のチームとして誇りに思わないと」と四田監督。だが、春夏計4度の全国優勝を誇り、大阪で長らく伝統を築き上げてきたのは大体大浪商だ。古豪の意地とプライドを胸に、まずは春の大阪の頂点へ駆け上がり、夏を見据えている。

【了】

沢井史●文 text by Fumi Sawai

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