「最後が和田でよかった」「嬉しかった」…井口と和田を繋いだ不思議な力
第1打席に井口がレフト前ヒット、第2打席には和田が1500奪三振
3打席全てにドラマがあった。
和田の完璧な立ち上がりで始まったこの試合。まず魅せたのは、井口だった。和田と向き合った最初の打席は2回先頭。3ボール2ストライクからの8球目、外角の真っ直ぐを捉えると打球は三塁寄りにいた遊撃・今宮の左を抜けて左前へ抜けた。スタジアム全体から大歓声が上がった。「1本打ててホッとした」。井口の表情が緩んだ。
4回の第2打席。1ボール2ストライクからの4球目、和田は渾身の真っ直ぐを投げ込んだ。空を切る井口のバット。今度は和田が井口から3者連続となる空振り三振を奪った。これがこの日6個目の三振。奇しくも、この三振で和田は通算1500奪三振を達成したのだ。
「まさか井口さんから1500個目を取れるなんて夢にも思っていなかったです。取った時は知らなくて。三振を取りにいこうとはしましたけど、1500個目を狙いにいった訳ではなかった。場内アナウンスで『あ、そうなんだ。井口さんからじゃないか』と思いました。一生残る、自分にとっても一生忘れられない1球になったと思います」
2人の物語は、6回の第3打席がクライマックスだった。「全部真っ直ぐ。全部ど真ん中を目掛けて投げました」と和田。全球真っ直ぐ勝負。2ストライクからの3球目を井口が打ち上げて中飛に倒れた。それぞれがベンチに戻る前、2人はマウンド付近ですれ違う。言葉を一言交わす。井口が左手で和田のお尻を叩き、和田は頭を下げた。
井口「僕が通ろうと思ったら、和田がマウンドのところで待っていてくれていたので『ありがとう』と声を掛けました。和田も『ありがとうございました』と言ってくれて。あれで福岡で終わったかなという感じでしたね」
和田「井口さんがフライになって、こっちに戻ってくるので、待って一礼しようと思いました。球数的にも、あれが最後の対戦になると思ったので。待っていたら、井口さんの方から来てくれて。『ありがとうな』と言ってもらえて嬉しかったですね」