日本野球の「レベルダウン」に警鐘 クロマティがアカデミー設立を目指すワケ
巨人で活躍したクロマティ氏、「私は選手の自己表現をもっと見たい」
巨人史上最強の助っ人と呼ばれるウォーレン・クロマティ氏が、7月に宮城県石巻市で行われたリトルリーグ小学4・5年生の全国大会「MLBカップ」にゲストとして参加するために来日。16チーム、250人の野球選手に直接指導を行い、東日本大震災の被災地復興にも2年連続で貢献した。日本の野球文化と競技レベルの発展を願うクロマティ氏は都内でインタビューに応じ、英語で指導するベースボールアカデミー設立を計画していることを明らかにした。
「今回来日した目的の1つはMLBカップです。MLBジャパンと日本のリトルリーグの王者を決める大会に2年連続で協力することができました。私自身も素晴らしい大会を楽しむことができました。参加したチームだけではなく、大会運営に携わった方々、2年連続で参加できたので、石巻の人々、野球少年と絆を育むこともできました。みんな私の名前を呼んでくれます。少年だけでなく、お母さん、スタジアムで働いている女性スタッフの方も“クロマティ、クロマティ”と呼んでくれました。忘れられていないということは本当に幸せなことです。震災復興に貢献できることも素晴らしいことでした」
柔和な笑みを浮かべながらこう語ったクロマティ氏は、NPB史上屈指の助っ人として絶大な人気を誇った。メジャーリーグのモントリオール・エクスポズ(現在のワシントン・ナショナルズ)から巨人に加入したクロマティ氏は1984年から90年まで7シーズンに渡って活躍。1989年にはMVPに輝き、通算打率も.321をマークするなど輝かしい成績を誇っただけでなく、ヒットやホームランを放った後のバンザイパフォーマンスも有名だった。
今回は2か月間、日本に滞在することになるクロマティ氏は東京ドームなどで公式戦を観戦。テレビでNPBや甲子園もチェックするなど、日本野球の現在地を観察した。その上で、日本野球に対する心からの提言をしている。
「このことは言わせて下さい。私はテレビなどで日本のプロフェッショナルの野球のレベルを見ていてがっかりしています。レベルダウンしています。野球に対する関心、ファンの熱意は健在です。しかし、競技面でのレベルは少し落ちてますね。進化という部分というか、メンタル面の部分なのか、日本の野球はワンパターンと言ってもいいかもしれません。日本の野球はずっと同じで、サプライズというものが欠けています。言うなれば、全てが予想可能なのです。先頭打者がヒットを打てば、次の打者はバントする。驚きという要素、本能と呼ぶべきものが足りません。ベースボールと野球はリズムが違いますね。依然としてあまりに組織立っているというか。ですから、私は選手の自己表現をもっと見たいと思っています」