広島の選手たちの“原点” 由宇練習場の存在意義の大きさ
「選手にはプラスかマイナスしかない」「戦える選手でないと使わない」
「まず練習するしかない環境というのが最も大事だと思う。プロに入って来る選手は実力もあるし、身体の強さも持ち合わせている。それを磨くことができるかにかかっている。体力はあるのだから、多少のハードトレーニングをさせてもしっかりケアをすれば、壊れることはない。それができるかどうか……。選手というのはプラスかマイナスしかないのだから」
水本・2軍監督はテスト生として89年のドラフト外で入団も2年で引退。長期に渡りブルペン捕手をつとめ11年に3軍統括コーチに就任した。そして14年オフに2軍監督代行、16年より2軍監督に就任した、いわば生粋の叩き上げだ。
「僕自身の現役が短かった。やっぱり悔しい部分もあるし、その後の裏方生活でもいろいろな選手を見て来た。だからこそやりたいこと、言いたいこともある。『伸びるのに人間性も必要』と言われる。必要ないと思うかもしれないですけど、僕の経験上、そういう選手はやっぱり伸びる」
一人の選手の名が挙がった。背番号10、岩本貴裕(※2)。10年に1軍で2桁本塁打を放ち一時レギュラーを獲得しつつも、その後、数年は不調。そして17年、完全復活を果し、大事なところで貴重な働きを見せている。
「行けると思ったけど、少し、調子に乗ったかな。だからその時にはいろいろと話させてもらった。厳しいこともたくさん言った。本当に怒鳴り上げたりもしました。でも彼はもう一度、頑張ってくれた」
「鈴木誠也が欠場中の中、よくカバーしている。でもまだまだ、あんなものではない。年齢だって31歳と油が乗り始める時期。技術的にも進歩できるし、彼も身体が強いから」
育成と強化。特にファームではこの2つの並立が難しいと言われる。だがカープの場合、続々と20歳代前半の選手が1軍出場を果すとともに、2軍も中日と首位を争う戦いを繰り広げている。
「最も大事なことは1軍が強くなること。そのために多くの選手の才能を伸ばして戦力を作ることが我々の仕事です。だから重要なことは、下(=2軍)でも当然のように戦えないといけない。それはベテランでも高卒の若い選手でも変わらない。まずは下で戦力として結果を残す。それも飛び抜けたくらいであって欲しい」
「だから戦えない選手は下でも使いません。今、現在、試合へ出て戦える選手を使って勝つ。それが2軍でも重要だと思う。緊迫した試合に勝つことによって技術や経験など、様々なことを覚えることもできる。普段の練習はもちろんですが、加えて実戦。これらにいかに真剣に取り組むかで選手の伸び方が大きく変わって来ると思う」
「よく故障明けの調整登板などがありますけど、ああいうのも基本はやりたくない。チーム予算の中で保有可能な選手数があって、規則上ファーム組織も1つしかないから、それはしょうがない。だから3軍の扱いなども他チームさんとカープは大きく異なって来る。3軍でノンビリ育成している時間も余裕もない。戦える選手ならばシーズン中でも契約する。使えるなら即、1軍に上げる。でもそうでなければ……。もちろん球団の判断もありますが、そこはシビアな部分だと考えています」