「楽天の役に立てる」―球団草創期を支えた渡辺直人が球団にもたらすもの
球団は人間性も高く評価「チーム内の模範に」
今季は、ルーキーの源田が正遊撃手に収まったことに加えて、内野の守備固めをも若手選手が務めるケースが増え、バイプレーヤーとしての出場機会が激減。昨季は打率.309を記録した打撃でも不振に陥り、シーズン終了後に球団から戦力外通告を受けた。
今季限りの引退も視野に入れていたという渡辺に現役続行の道を用意したのは、その人間性をもっともよく知る古巣だった。11月21日、楽天は契約合意を発表。安部井寛チーム統括本部長は「渡辺選手は、泥んこになりながらチームを引っ張ってくれる選手だと評価しています。これまでの豊富なプロでの経験と、その明るい人間的な魅力で、チーム内の模範になってくれることも期待しています」と、人間性を高く評価し、獲得に至ったことをコメントしている。
11月30日に行われた入団記者会見で、渡辺は「またこのユニホームを着てプレーできるということが、ゾクゾクするような気持ちで、本当に嬉しくて言葉になりませんでした」「楽天にいた頃とはひと味違ういろんな経験を積んでちょっと大きくなった自分でいると思っています。楽天の役に立てる、そういう気持ちでいます」と、変わらぬ笑顔を見せた。
この7年間で、楽天という若い球団は数々の経験を積んだ。渡辺が会見で「埼玉西武に所属していたときに(2013年の)リーグ優勝、胴上げの瞬間を目の前で見ていました。悔しいと思う反面、ここまで来たんだなという気持ちで見ていました」と語った通り、現在のチームは、かつて在籍していた頃よりずっと頼もしくなっているはずだ。
今季の快進撃により、5年ぶりの「優勝」は現実味を帯びてきている。プレーだけでなく、精神的支柱としても大きな役割を果たしてくれる男の加入は、数字では推し量れないほどの好影響をチームにもたらすだろう。チームメイトとファンに深く愛されている渡辺は、7年目のトレードで涙を流した馴染み深い選手たち、そして新世代の若鷲とともに、来季こそ歓喜の涙を流すことができるだろうか。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)