強打で高校野球を席巻した智弁和歌山 名門復活の鍵を握る存在
もともとは投手だった冨田「今は1キロのバットを振っている」
文元のセールスポイントは勝負強さだ。8月の新人戦からチャンスに強い打撃を見せてきたが、近畿大会の準々決勝・法隆寺国際戦では試合を決める2ランを放つなどパワーも見せつけることができるようになったのは「少々泳がされてもヒットになる打球が増えた」と自負できるほどスイングが力強くなった証だ。
冨田は今夏の甲子園で放ったホームランで一気にその名を広めた。元々投手だったが、長打力は林にも劣らないものを持っており、高校では打者1本でプレー。1年秋からずっと背番号7を背負い続けている。この秋は主に5番に座り、近畿大会初戦の履正社戦では左方向へ豪快な満塁弾を飛ばした。まるで甲子園で放った一打をほうふつとさせる打球だったが、決して満足はしていない。「もっと飛ばす力をつけるために、今は1キロのバットを振っているんです。この冬はこれでどれだけ振り込めるか。2月くらいに通常のバットに戻して、実戦に入ってどれだけ打てるかだと思います」。
2人以外に、近畿大会でホームランを放った黒川史陽、西川晋太郎という1年生コンビも躍動。“伝統”の強力打線が、オーバーラップしてくる。秋はボールボーイとして試合を見つめてきた林も最近ようやくバッティング練習ができるようになった。「林が戻ってくるのは頼もしいけれど自分も負けられない」と文元が話せば、冨田は「自分もやれることをやってもっとパワーをつけたい」と気合を入れる。「現状に満足せず、もっとやるという意識で冬を過ごしたい」という文元の言葉に象徴されるように、ライバルがひしめくチーム内の競争が激化しそうだ。その張りつめた空気が、名門復活への道を加速させることは間違いない。
(沢井史 / Fumi Sawai)