飛び交う賛否 中日の松坂大輔獲得は、果たして是か非か
ソフトバンクでも見られた凄まじい“松坂効果”
松坂が3年間在籍したソフトバンクの話になる。例年、ソフトバンクの春季キャンプには大勢のファンが集まるのだが、松坂が加入した2015年のキャンプでは連日さらに数多くのファンが駆けつけ、平日でも1万人前後、週末ともなれば、3万人超の集客があった。松坂加入の際の盛況ぶりと言ったら、凄まじいものだった。
3年目ともなれば、さすがに1年目のような過熱ぶりではなかったが、それでもその人気は凄かった。同級生の和田毅や内川聖一、松田宣浩、柳田悠岐、今宮健太、千賀滉大といった球界を代表する選手が数多くいる中でも、やはり別格だった。そして松坂は、時間があればサインなどのファンサービスを厭わない男だった。
松坂がこれまで在籍した西武は高知と宮崎県日南市の南郷で、そしてソフトバンクは宮崎市内でキャンプを張っていた。一方、入団が決まった中日のキャンプ地は沖縄県北谷町。松坂がが臨む初めての沖縄キャンプとなるだけに、地元ファンが松坂見たさに北谷へ駆けつけることは十分に考えられる。そして「中日の松坂」としての一挙手一投足が、ホークス時代のように連日メディアを賑わすことになるだろう。北谷のキャンプ地にどれだけ集客があるかは始まってみないとわからないが、キャンプだけで年俸1500万円分は軽く“チャラ”となるだけのファンは来ることが予想される。
ソフトバンクに在籍した3年間で、松坂が1軍公式戦のマウンドに上がったのは、わずか1試合だけ。2016年の最終戦、敵地での楽天戦だった。推定年俸は3年12億円と言われていたが、ソフトバンクの関係者によれば、グッズ販売やメディアなどへの露出効果などを踏まえると、松坂関連の収入で3年間の年俸の半分ほどは“ペイ”できていたのだという。1軍でほとんど投げていないにも関わらず、グッズ売り上げは上位にいた。さすがに年俸4億円では費用対効果が悪すぎたが、松坂退団後には「年俸5000万円や1億円なら獲得するメリットはあると思います」との声もあった。
プロ野球球団はもちろん勝利を求められているが、それとともに「興行」でもある。プロ野球チームとして言えば、勝つことが最優先であるが、会社という視点で言えば、収益を上げることが重要となる。
もちろん地道に選手を育てることも大事だが、チーム強化には投資も必要だ。そのためには、元手がいる。強さだけに限らず、様々な魅力を創出して観客を集めて資金を稼ぎ、それを元にチームを強化する。強くなれば、観客はさらに増え、収入も増加する。ファンにとって魅力となるサービスを生むことも可能となる。そうやって様々なビジネスが生まれ、望ましい循環が生まれていく。その1つとして、松坂獲得は大きな営業メリットを生み出してくれる可能性を秘めている。
ファンの声の中には、松坂獲得による若手の出場機会減を憂う声もあった。だが、そこにも異を唱えたい。出場機会は与えられるものではなく、力で掴み取るものである。それは若手にも、ベテランにも、松坂にも共通する。競争だ。確かに松坂には実績も経験もあるし、知名度もある。もちろん復活を遂げてほしいが、3年間まともに投げられていない38歳に、1軍の座、ましてやローテの座を掴ませているようでは、他の選手が情けないのではなかろうか?