NPB最長記録の育成生活7年 ホークス戦力外の25歳が歩み始めた第2の人生
これまで知らなかった会社員の世界
その内の1人が伊藤氏で「相当ありがたいことだと思います。自分が野球以外の仕事に就いて生きていけるのかな、という不安もあったんです。でも、ここにいる人たちはみなさんが僕のことを知ってくれていて、ある程度僕の能力がいまどれくらいかというのも理解してくれている。そういう面でもありがたいです。感謝しかないです」と、球団からの配慮に感謝を示す。
会社員として働きだしてから、もうすぐ2か月が経つ。「正直パソコンは本当にしんどいですね。会社員は本当にしんどいよ、と言われる意味が少し分かりました。メンタル的にしんどいところはありますよね。グラウンドだと体力的にしんどいところはありますけど。生活リズムも全然変わりますよね。9時半から18時までが定時なんですけど、残業とかも全然あるので、働いている時間は野球やっている時に比べると遥かに長いので。会社員の人たちって、こんなに働いているのか、と思いました」。これまで知らなかった会社員の世界を知り、少なからず驚きもあったという。
「いまファンサービス部というところにいて、ファンクラブ会とかの関心を持っていただければいいな、と思いますね。僕がキッカケになって入会してもらえると、球団にも貢献出来るのかな、と思いますね」と話す伊藤氏。初めてファンの前に立ち、働いた11日は、多くのファンの来場もあって、過去に例を見ないほどの新規入会者がいたという。そして、伊藤氏も、数人のファンから声をかけられて激励を受けた。
「ファンの人が声かけてくれたりして、それはやっぱり嬉しいですね。もうファンクラブに入っててコアなファンだったんですけどね(笑)」
この先、これまでの現役生活よりも遥かに長い年月が待っている。球団のため、そして愛する家族のため――。第2の人生はまだ始まったばかりだ。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)