パドレスGMが誇る「補強の1つ」 ダル、大谷らをサポートした日本人スタッフの存在
元日本ハムの中垣トレーニングコーチ「隙間を埋めるのが僕の役目」
日中の寒暖差が15度近い砂漠地帯のアリゾナ州ピオリア。朝9時半。まだ肌寒い空気の中でウォーミングアップする選手たちに声を掛ける日本人スタッフがいる。昨シーズンから入団した中垣征一郎・応用運動科学ディレクターだ。「何やってるんだか、全然分からない肩書きですよね。僕にも今のところ分からないままです」と笑う中垣氏の前職は、日本ハムのトレーニングコーチだ。
ダルビッシュ有、大谷翔平というアスリートの名前とリンクして、中垣氏の名前を聞いたことがある人も多いだろう。筑波大学、ユタ大学大学院などを経て、2004年に日本ハムのチーフトレーナーに就任し、選手が持つ能力を最大限発揮できるように運動のメカニズムやコンディショニング面でのサポートを続けた。2011年はフリーで活動し、翌2012年にはレンジャーズ入りしたダルビッシュの要望を受け、共に渡米。2013年から日本ハムに復帰すると、1軍と2軍を行き来しながら、同年に入団した大谷ら多くの選手をサポートした。
そんな中垣氏の存在に早くから興味を抱いていたのが、パドレスのAJ・プレラーGMだ。かつてレンジャーズの国際担当スカウトだったプレラーGMは、ダルビッシュ調査のために何度も来日し、NPB随一の投手に成長する姿を追った。その成長をサポートした中垣氏の信念や理論に熱心に耳を傾け、2014年にパドレスGM職に就くと、一緒に働かないか、と誘い続けた。中垣氏は「どうもコイツの周りからすごい選手が出ているぞ、と思ってくれたようです。僕が何をできるか試したかったんだと思いますよ。ものすごく好奇心が強い人なので」と謙遜するが、プレラーGMは「自分が誇れる補強の1つ」と胸を張る。
応用運動科学ディレクターとは、一体どんな役割なのだろうか。「リハビリ、トレーニング、健康管理など各分野に専門家がいますが、1つ1つが独立していると、どうしても重ならずに生まれる隙間が出てしまう。その隙間を埋めていくのが僕の役目だと思うんです」と中垣氏は言う。