パドレスGMが誇る「補強の1つ」 ダル、大谷らをサポートした日本人スタッフの存在
野球とは「技術がないと体力が生かされないことが非常に多いスポーツ」
中垣氏が常に考えているのは、いかに選手が持つ才能を実際のパフォーマンスとして引き出すサポートができるか、だ。他競技と比べても「野球というのは、いくら体力があっても、技術がないと体力が生かされないことが非常に多いスポーツなんですよね」と分析する。例えば、筋力があればあるほど速い球が投げられるわけではないし、俊足の選手が必ずしも走塁が上手いとは限らない。さらに言えば、体力を生かし切れなかった運動技術のひずみが怪我につながる。
「自分の持っている体力を、どうやって技術の中で発揮していくか。野球って基本の投球動作や打撃動作という点で見ると、技術によって体力が生かされることが非常に多いスポーツなんです。体力と運動技術の橋渡しがどれくらい上手くいくかが、パフォーマスを向上させること、怪我を予防したり怪我から上手に回復していくことにとっては非常に大事だと思っているので、僕はいつもそこに着眼点を持って仕事をしています」
あらゆる分野でのサイエンス=科学が発展する現代において、スポーツサイエンス=運動科学も例外ではない。パフォーマンスを向上させるために、筋肉、骨格、栄養など研究分野は細分化され、20年、30年前では知り得なかった事実が科学的実証と共に明らかになってきた。だが、事実が明らかになっただけでは道半ば。「最後はサイエンスをどうやって実践に落とし込むかが非常に大事」だという。
「デジタルな情報は、現場で使い方を間違えると、あまり意味がなくなるものもあるんです。それをどうやって選手へのインストラクションを通してアナログな情報に置き換えていくか。つまりパフォーマンスに反映させるか。それがスポーツの面白みだと思うんですよね」
パドレスで選手育成部門を統括するサム・ジーニー氏は「ナック(中垣氏の愛称)はトレーニングも野球も知っている貴重な人物。トレーニングの専門家と野球の専門家(=選手やコーチら)の間に入って、それぞれが必要な情報や知識を橋渡しし、上手い具合にチームとして目指す方向にまとめてくれている」と高く評価。「このトレーニングをすればどういう結果が出るのか。このリハビリは何を目指しているのか。選手がそれを知るか知らないかでは、同じことに取り組んでも結果やパフォーマンスに大きな差が生まれる。ナックはその意識付けがとても上手で、選手からの信頼も厚い」と話す。