独特フォームに超スローボール…唯一無二の変則右腕、多田野氏のキャリア
球場を大いに沸かせた「イーファスピッチ」
多田野氏のNPB通算成績は、80試合18勝20敗2ホールド、防御率4.43。これは、プロ野球選手として大成功を収めたと言える数字ではないかもしれない。それでも、独特のフォームから繰り出す切れ味鋭いスライダーやフォークに加え、「イーファスピッチ」とも呼ばれる超スローボールを投じる変幻自在のスタイルで、大いに球場を沸かせてくれた。
北海道日本ハム時代のファンフェスティバルでも、的当てゲームでイーファスピッチを披露し、記録を認めるか否かを賭けたじゃんけんに勝利すると「正義は勝つ」と発言して周囲の笑いを誘うなど、チームに溶け込み多くのファンから人気を博した。
そして、3月1日に催された引退式。「アメリカで5年、ファイターズで7年、石川で3年の15年プレーしてきましたが、北海道のファンの声援が一番強く印象に残っています」と、懐かしいユニホーム姿でスピーチした多田野氏は、ラストピッチとして4年ぶりに札幌ドームのマウンドへ。
鶴岡慎也選手のミットめがけて投じたのは、もちろん代名詞の超スローボールだった。
これからは日米で培ってきた経験を糧に、スコアラーやスカウトとして活動するという。独特のフォームや超遅球を生み出した創意工夫と独創性は、セカンドキャリアにおいてもきっと生かされるはず。新たな人生の第一歩を踏み出した多田野氏の活躍を祈念している。