「いかに腹をくくれるか」―メジャーでも圧巻の活躍、平野佳寿の“こだわり”

「タイミングが狂えば打者は自分自身のスイングができない」

 オリックス時代の晩年あたりから投球に対する確固たる考えのようなものができあがった。自分自身のボールを投げたい、という投手の欲求もあるだろう。しかし、それ以上に結果を出すことの重要性、そのための方法を追い求めてきた。

「若い頃は自分の投げたい球を気持ちよく投げたかった。でも、それだけで抑えられるほど甘くない。僕なんかより良い投手はたくさんいるし、すごい打者もいる。だからいかにタイミングを狂わすかが大事」

「タイミングが狂えば打者は自分自身のスイングができない。そうすれば打ち取れる確率はかなり上がる。そういう打球が野手の間を抜けたり、いない場所に落ちるのはしょうがない。それよりもいかに確率をあげるか。そのために球種、投球フォームなどいたるものを使って行くことを考えている」

「自分の役割はわかっている。もちろんブルペンの中で最も安定した投手が任されるストッパーを目指す。でも、その前に自分の仕事を全うしてチームが勝つことを第一に考える」

 メジャー1年目、チームの勝利の先には、こう話していたオリックス時代にはなし得なかった大きな夢が待ち構えている。

 01年、球団創設4年目のDバックスは優勝候補筆頭のヤンキースを倒して世界一になった。サヨナラ勝ちで幕を閉じた劇的なシリーズだった。チームを牽引したのはランディ・ジョンソンとカート・シリングという歴史に残る名投手。そして今年、Dバックスは首位争いをしている。中心となっているのは、アーチー・ブラッドリー、ブラッド・ボックスバーガー、そして平野らが形成する強力ブルペン陣だ。

 昨季はプレーオフに出場したものの、近年は名門ドジャースやジャイアンツに遅れをとっていた感のあるDバックス。いよいよガラガラヘビ(Dバックスのチーム名の由来=ダイヤガラガラヘビ)がやってきた。その中心には間違いなく一人の日本人右腕がいる。

(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。

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