トレードはビジネスだけにあらず? 病床の母のため…人情味溢れる移籍劇も
5年以上のブランクから復活 家族の住む街に戻ったベンターズ
もう1つ最近のトレードで印象深かったのは、タンパベイ・レイズからアトランタ・ブレーブスへ移籍したジョニー・ベンターズの話だ。2010年にブレーブスでメジャーデビューを果たし、3シーズンに渡ってブルペンの一員として活躍していたベンターズは2013年にトミージョン手術が必要という診断を受けた。翌年にもう一度同じ手術を必要とし、実に5年以上もメジャーリーグの舞台から遠ざかっていた33歳のベンターズは今季復活を果たした。タンパベイ・レイズの一員として22試合に登板。だがチームはプレーオフ争いからも遠ざかり、このトレード市場では売り手となっていた。そこで買い手であるアトランタ・ブレーブスはブルペンに加える新たな戦力として左腕のベンターズを獲得した。
ブレーブスの一員としてメジャーのマウンドに立ったのは2012年10月5日が最後だったが、子供たちも地元の学校へ通うなど、ベンターズの家族はアトランタの街を離れる事なく住み続けていた。そしてメジャーリーグでのキャリアをスタートした場所に彼はまた戻る事となった。
この例に関しては、人情に浸るようなトレードというだけではなく、ブレーブスもプレーオフ進出へ向けた貴重な戦力として獲得を決定。どんな結末となるかは分からないが、メジャーリーグにもこの二例のようにチームが選手の事を思って実行したトレードがいくつも存在する。
プロ野球では今季も最後の最後に“駆け込みトレード”が何件か発生した。所属球団で結果を残せなかった事が放出される要因である事が第一かもしれないが、新天地で活躍を願うチームの親心もあるだろう。表上はビジネスとして巻き起こるトレードの数々。選手に対しても、家族に対しても冷徹なものである印象をお持ちの方もいるだろう。だが、今回挙げたような人情味溢れる移籍も存在するという事を知り、今後巻き起こるトレードの数々を一味違った視点で楽しむ事もオススメしたい。
(「パ・リーグ インサイト」新川諒)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)