混戦の2018年ペナントレース、前半戦を「得失点の波」で解析【パ編】
勝負強く接戦拾うロッテ、打線固定で立ち直った楽天
◯千葉ロッテマリーンズ
チーム本塁打46と、ホームランパークファクターが最も低い球場をフランチャイズにしているとはいえ、ダントツの最下位。長打力不足はデータ上今年も解消されていない千葉ロッテ。ただ四球は317でリーグ3位、死球65はダントツのトップの65と、出塁率.338はリーグ2位。得点圏打率も.267でリーグ3位と健闘しています。
またチーム防御率も3点台をキープ。グラフも全体的に低いゾーンで推移し、得点と失点の差が少なく、僅差での勝負で勝ちを拾っている様子が伺えます。
また7月から4番に座った井上晴哉が
6月打率.386 OPS1.381 本塁打6
7月打率.400 OPS1.286 本塁打7
と大覚醒。3番の中村奨吾とともにチームのポイントゲッターとして機能しています。また開幕から1番で起用されていた荻野貴司が今年も怪我で離脱。その穴を日本ハムからトレードで獲得した岡大海が埋めようしています。
8月浮上には、後半戦に1、2番を任されている平沢大河、藤岡雄大の出塁率改善がカギとなるでしょう。
なお、7月最後の大きなブルーゾーンは、ソフトバンク、西武、そしてチーム状態が改善されてきた楽天に大きく失点した影響です。
◯東北楽天ゴールデンイーグルス
とにかく前半戦の楽天は、昨年までの打線が機能せず得点力不足に泣かされました。また4月下旬から5月上旬にかけて大きな連敗も喫し、他の5チームと大きな差をつけられてしまいました。
その後も、失点はそこまで多くはなく、低い水準で推移はしているのですが、それに反応するかのように得点がそれを下回るという噛み合わせの悪い状況が続いていました。
6月16日梨田監督の解任が発表され、翌日から平石洋介監督代行となって再出発。すると、それまでブルー一色だったグラフがレッドゾーンに変貌しました。
まずは打線ですが、それまでの流動オーダーが一変。1番センターに2年目の田中和基を抜擢し、その後茂木栄五郎、島内宏明、今江年晶、銀次、アマダー、藤田一也、ペゲーロ、嶋基宏を基本軸に打線を固定。
すると交流戦終了前まで
打率.232 OPS0.616 得点圏打率.217
1試合平均得点3.09
だった打線が交流戦後
打率.271 OPS0.778 得点圏打率 .293
1試合平均得点5.34
と改善しました。
また投手陣の成績も改善され、特に救援防御率は2.99と大きく改善しています。
3位まで4.5差となり、8月の戦い方如何によってはクライマックスシリーズ争いにも参戦できそうな状況です。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。