スタンドを歩き回ってへなちょこ脱出 感謝と謙虚さで売上げ急上昇のみこさん
「待っててくれるのが、すごくうれしいんです」
今年、一気に売上げがアップしたのは、決して偶然ではないだろう。「へなちょこ」を自称するみこさんだが、売上げを伸ばすためにとにかく歩き回ったという。
「いろいろ努力しました。1年目は外野を回ってみて、あまり売れないことが分かった。2年目は4階席まで行って、少しずつ売れ始めた。私はサッポロを売っているんですけど、あまりサッポロがいないところがあったりして。とりあえず他人より歩くことを心掛けています。おかげで脚の筋肉がすごくて、お客さんにも『え、陸上部?』って言われたり(笑)」
常連が増え、売上げが伸びることはうれしいが、同時に困っていることもあるという。
「常連さんが増えて下さって、すごくありがたいんですけど、逆になかなか皆さんのところに回れなくて申し訳ないです。売れ始めた頃にすごく売れる席の周りしか行かなかったことがあるんです。そうしたら、他の席に座っていたお客さんに『なんで来てくれないの?』って言われちゃって。それを聞いたら『ダメだ、全部回るようにしよう!』って気合が入りました(笑)。どうしても外野までは回りきれないので、内野は全部回るようにしています。
待っててくれるのが、すごくうれしいんです。1年目、2年目から買ってくれているお客さんは、本当に『ありがとうございます』って拝んじゃうくらいです。私なんかのために……っていう感謝の気持ちが、ずっとあります」
そんなみこさんがスタンドから4年間応援し続けているのが、井口資仁監督だ。現役時代からその雄姿を目に焼き付けており、根っからの井口ファンだ。
「ホークス時代からめっちゃカッコいいと思っていて、カードも集めていたんです。好きな数字と言えば、当時の背番号の7を選んでいたこともあります。だから、働き始めた時、すごくうれしくて。去年引退した時は寂しすぎて、記念のコラボTシャツを朝から並んで買いに行きました。Tシャツは家に飾ってあります」
今年で売り子を卒業するが、「寂しいです。最後泣いちゃいます」と困り顔。「心にポッカリ穴が空いちゃう感じで、お客さんや仲間と会えなくなるのが、本当に寂しくて」と話す。だが、最後まで変わらず、感謝の気持ちを伝えるために、スタンド内を歩き続ける。
「4年目だし、たくさん売りたい思いもあるんですけど、お客さんと会える回数が減ってきているので、ちゃんと全部回りたいし。『ペナントレース応援しているよ』って言って下さるお客さんもいて、そのためにももっと売りたいんですけど、皆さんとコミュニケーションも取りたいし。いろいろ葛藤があって複雑ですけど、最後まで頑張ります」
(佐藤直子 / Naoko Sato)