篠塚和典氏が明かす”真実” 伊藤智仁氏を打ち砕いた「伝説のサヨナラ本塁打」

初球は打たないというイメージも…「そうはいかないよね(笑)」

 打席を2度外した時点で、すでに勝負はついていたのかもしれない。篠塚氏は言う。

「うん、投げ急ぎですよね。キャッチャーの古田もストライクを取りたいというのがあったから。真っ直ぐの138キロをスーッと放ってきた。真ん中からやや外めの高め。普通は向こう(ライト)に飛んでいかないんですけどね。やっぱり相手はストライクを取りたい、というのがありましたよね。特に三振(記録)があったから、取りたいというのがあった。ストライク先行でいこうというのが、キャッチャーにもあった。おそらく、古田の中でも自分はあまり初球から打つという印象はなかったと思います。でも、そうはいかないよね(笑)。

 さっきも言ったように、打てるところは最初からいこうと思っていたので、多少はボールでも振っていかないと、と。(打席に入る時は)ホームランは全く予測していなかった。そうしたら、それなりに来るところに来ちゃったという感じ。もうちょっと低かったら(スタンドには)行ってなかったかもしれないし、高さ的にはちょうどよかった」

 プロ野球史に名を刻む名打者は「それは気持ちいですよ(笑)。みんな一生懸命やっていて、9回の裏でおいしいところをもらっちゃった」とも話し、ニッコリと笑みを浮かべた。ヤクルトバッテリーに対する勝利と言える打席だった。

 今年6月2日、県営富山野球場で行われたBCリーグ富山-信濃戦の試合前に、篠塚氏と伊藤氏による「一打席対決」が実現。25年ぶりの再戦は、篠塚氏が華麗なレフト前ヒットを放ち、”返り討ち”という形で決着した。この対戦についても、篠塚氏はこう振り返っている。

「もうちょっと球場を小さいところにしてもらえればよかったですけど(笑)。彼はスライダーも投げてきた。スライダーは投げるなって言ったんだけど(笑)。実は、1球で終わっちゃうのもあれだから『3球くらいは投げるようにしろよ』と言っていて。『ストライクが入るか心配なんですけど』って言うから、1球投げて様子を見たら、ストライクだった。2球目はスライダーを放ってきてボール。3球目はもう打っていいだろと打ったら、ライトへのファウル。カウント1-2になって、4球目は空振りしちゃったんですよ。スライダーを投げてきて。でも、本当にバットの先っぽに当たったんです。で、アンパイアがファウルと。そして、5球目は外めの真っ直ぐをポッと(レフト前に)」

 当然、球場は大いに盛り上がったが、本人たちも再戦を満喫した様子。今も語り継がれる伝説のサヨナラ本塁打。25年前の2人の対決はまさに、ファン、そして選手たちの脳裏にも刻まれる名場面だった。

(Full-Count編集部)

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