極端な“内弁慶”、長打力と救援陣のテコ入れ… データで今季を振り返る【中日編】

中日の各ポジションごとの得点力グラフ
中日の各ポジションごとの得点力グラフ

根尾の指名は内野レギュラー陣へ大きな刺激、投手&捕手も効果的に補強

 次に、中日ドラゴンズの各ポジションの得点力が両リーグ平均に比べてどれだけ優れているか(もしくは劣っているか)をグラフで示して見ました。そして、その弱点をドラフトでどのように補って見たのかを検証してみます。

 グラフは、野手はポジションごとのwRAA(平均的な打者が同じ打席数立った場合に比べて増やした得点を示す指標)、投手はRSAA(特定の投手が登板時に平均的な投手に比べてどの程度失点を防いでいるかを示す指標)を表しており、赤ならプラスで平均より高く、青ならマイナスで平均より低いことになります。

 一塁手ビシエド、左翼手アルモンテ、右翼手平田がプラス評価です。守備や走塁では大きな貢献をしている大島ではありますが、強打者揃いのセンターにおいてはその攻撃力は平均以下という評価になります。また投手陣の大きなマイナスはお察しの通りです。

 ドラフトでは1位指名で4球団が競合した根尾昴をくじで引き当てました。岐阜県出身で、小学生のときドラゴンズジュニアのメンバーに選出、投手としてジュニアトーナメントに出場した経験のある根尾にとって、縁のある球団からの指名となりました。

 甲子園でも投手として出場しましたが、打撃でも打率.371、本塁打3、OPS(出塁率+長打率)1.087の強打を披露。さらにはショート、センターの守備で守備範囲の広さ、肩の強さ、足さばきの巧みさなど身体能力の高さをいかんなく発揮していました。根尾は入団交渉の席で遊撃手のポジションを狙うと直訴したとの報道がありました。前述の通り、今季の中日の内野は、セカンドに高橋、ショートに京田、サードに福田と規定打席に達したレギュラーメンバーがいますが、いずれも攻撃力の評価ではマイナスとなっています。ここに根尾がポジション争いに加わることで、競争原理が働き、得点力向上への起爆剤になることでしょう。

 当面の大きな課題である投手力補強として、2位に梅津晃大、3位に勝野昌慶を指名しました。特に3位指名の勝野は11月に開催された社会人野球日本選手権で、準決勝の完封を含め、2度の先発で2勝、19回1/3で自責点1、奪三振率9.31の好投でチームの優勝に貢献、大会MVPを獲得しました。窮状の中日投手陣にいち早く加わり、活躍が期待される逸材です。

 さらには、4位指名で高校球界屈指の捕手、石橋康太を指名。甲子園出場は1度ですが、高校だけでなく、アマチュア球界随一の素質を秘める捕手として注目を集めていた逸材です。夏の予選で5本塁打、走力は50メートル6秒3、遠投は115メートルを記録し、捕球から二塁への送球タイムが1.9秒台と走攻守にハイレベルな指標を残しています。長年攻撃力評価マイナスだった捕手のポジションに光明が見える絶妙の指名と言えそうです。

 今年の中日のドラフトは与田剛新監督の強運も含め、各ポジションに効果的に戦力を埋めるという意味で高評価のドラフトだったのではないでしょうか。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。

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