パ全球団に負け越し、三振減少も長打力不足…データで今季を振り返る【ロッテ編】
長打力不足解消への狙いが垣間見えたドラフト戦略
次に、千葉ロッテマリーンズの各ポジションの得点力が両リーグ平均に比べてどれだけ優れているか(もしくは劣っているか)をグラフで示してみました。そして、その弱点をドラフトでどのように補って見たのかを検証してみます。
グラフは、野手はポジションごとのwRAA、投手はRSAAを表しており、赤ならプラスで平均より高く、青ならマイナスで平均より低いことになります。
ファースト・井上晴哉とセカンド・中村奨吾の健闘は光りますが、その他の攻撃陣はマイナス評価です。特に外野手の落ち込みは激しく、しかも外野手登録の選手の平均年齢は28.0歳はリーグ2位の高さ。1位の西武は28.1歳ですが、これは43歳の松井稼頭央の引き上げによるもので松井抜きでは平均26.7歳となりマリーンズが実質1位のようなもの。このマリーンズの「外野手高齢化問題」を解消すべく挑んだドラフトで1位に大阪桐蔭高校の藤原恭大を指名。3球団競合の末、井口監督が「交渉権獲得」のくじを引き当てました。
藤原は選手層の厚い大阪桐蔭で4番打者を任され、甲子園通算で打率.318、5本塁打、OPS.980をマーク。50メートル5.7秒、一塁到達タイム4.0秒、遠投110メートルなど足や肩でも高水準の指標です。また4位で明桜高校の山口航輝を指名。ドラフトでのポジションは投手と紹介されましたが、肩を痛めた影響で近年登板はなく、マリーンズでは外野手としての登録となる見込みだそうです。打球の飛距離は130メートルをマークするなどこちらも長打が期待される逸材で、長打力不足の解消を狙うドラフト戦略が垣間見えました。
投手では、2位に首都大学リーグ・日本体育大学の東妻勇輔、3位に東京六大学リーグ・早稲田大学の小島和哉を指名。東妻は2017年秋の首都大学リーグのMVP、小島は2018年秋の六大学リーグで3完封を含む5完投、27回連続無失点を記録するなど両投手とも大学野球では実績を残しています。東妻はリリーフとして、小島は先発左腕として来季からの活躍を期待されての指名となりました。
1949年毎日オリオンズとして誕生してから来季で70年となるマリーンズ。大型補強の期待もありましたが、ここは今季ルーキーながら全試合に出場した25歳の藤岡裕大、そして17年ドラフト1位、19歳の安田尚憲といったプロスペクトの成長に期待をかけることになるでしょう。そのため来季はショートに藤岡、サードに安田が積極的に起用されることが想定されますが、そうなると平沢や鈴木大地といった面々がそのポジションを争うのか、それとも外野の一角を担うことになるのかということになります。それは外野手高齢化問題の解消にも効果的で、攻撃力の全体的な底上げが計れるものと期待します。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。