接戦に弱く、本拠地東京Dでも負け越し…データで今季を振り返る【巨人編】
マイナス評価埋まる丸と岩隈の加入 ただビヤヌエバ、中島、炭谷は…
さて、マイナス評価のポジションに対してジャイアンツは積極的な補強を進めています。まずFA宣言していた丸佳浩の獲得に成功しました。2年連続セ・リーグMVPの加入は、現状マイナスのセンターの攻撃力を大きくプラスに転じさせる期待が高い大補強と言えるでしょう。
またMLBシアトル・マリナーズを今季限りで退団した岩隈久志の獲得も発表しました。NPB、MLB通算376登板のうち救援登板は15試合しかないのですが、果たしてジャイアンツでも先発としての起用となるのか、はたまたマイナス評価の救援陣を埋めるピースとなるのか、来季の起用法に注目です。
今季限りで退団したマギーの後継として、メキシコ出身でMLBパドレスに所属していたクリスチャン・ビヤヌエバの獲得を発表。110試合に出場し、384打席で20本塁打をマーク。本塁打率19.2はゲレーロの今季のペースと同等です。
ただOPSは.750なのですが、四球率(BB%)が6.6%で出塁率.299はかなり物足りない数値です。また三振率(K%)が27.1%で、これはMLBの中でもかなり大きい部類となっており、確実性のなさを示す指標となっています。また米データ分析サイトの「ファングラフス」によると、96試合三塁手で出場し、守備率94.7%、UZR-2.5と守備面でもそこまで評価される数値ではありません。
オリックスを自由契約となった中島裕之を獲得しましたが、現状大きなマイナスとなっている二塁手の攻撃力補強というには差し支えがあるかもしれません。というのも中島は米国では経験はあるものの、2015年にオリックスに移籍してからの4年間でセカンドのポジションに一度も入っていません。また今季、主に入ったサードでの貢献もそれほど大きなものではありません。守備範囲の影響や坂本との連携など守備面では不安要素も大きいことでしょう。
ここはビヤヌエバのバックアップとしての起用、さらには23歳の吉川尚輝や25歳の田中俊太、山本泰寛といったプロスペクトの成長へのカンフル剤として期待したいところです。
それから西武からFA宣言していた炭谷銀仁朗も獲得しています。確かに今季のジャイアンツの捕手攻撃力評価もマイナスなのですが、OPS.575の炭谷の加入でどれほどの攻撃力強化になるのかは疑問です。守備面での効果を期待する声もありますが、今季119試合捕手として出場した小林誠司の盗塁阻止率は3年連続リーグ1位で、今季の盗塁企図数自体も38と他の捕手に比べて圧倒的に少なく、走塁の抑止力となっています。
阿部慎之助が来季の捕手復帰を表明し、原監督が承認したとの報道もありました。これで来季の捕手登録は7人となることが予想されますが、果たしてこの補強による相乗効果は生まれるのでしょうか。
さらに言えばFA移籍による人的補償によってジャイアンツのプロスペクトが流出してしまうマイナス面が大きくならないかということも心配です。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。