元日ハムエース西崎幸広氏が振り返る「別格」野茂英雄と「天才」イチロー
自分なりのデータを整理「打者の直近データより対自分のデータを重視」
各打者の特長や得手不得手を探るため、西崎氏は自分なりのデータブックをまとめていたという。
「スコアラーがつけたデータを試合後にもらって、この打者にはどこを打たれた、どこを抑えたと、コースを9分割した図に自分用にまとめ直して整理していました。対清原(和博)とか対デストラーデとか、1年分溜めると、打たれるコースと打たれないコースがはっきり見えてくるんですよ」
現在の野球はデータ全盛期。投手であれば、ボールの回転数や変化する角度なども、細かな数字になって表れるようになった。もし、現役当時に今のようなデータシステムが導入されていたら、「間違いなく活用していますね」と話す。
「僕は、打者の直近のデータよりも、対自分のデータを重視していました。一応ミーティングでは、直前の3試合はこんな成績で、どのコースを苦手としていた、という資料をもらうんです。でも、大事なのは対自分のデータ。投手の配球や決め球が違えば、打者の対応も変わってくる。例えば、野茂のフォークを待っていたからインサイドのストレートで打ち取られたかもしれないけれど、僕のスライダーを待っているのであればインサイドのストレートは打てるかもしれない。だから、打者の直近の調子は参考程度に聞いていましたね」
現代のデータシステムがあれば、対自分のデータもより多くの要素が加わっていただろう。となると、かつて繰り広げられた名勝負は、違った展開を見せていたのだろうか。野球に限らず、スポーツに「たら・れば」はないが、もしかつての名勝負を現代で再現することができたら……。そう考えるだけでも、ファンは心躍るに違いない。
(佐藤直子 / Naoko Sato)