イチローがアクシデントで見せた人間力 死球を当てた2投手を救った言葉
1年前の3月、練習試合で頭部に死球を受けるアクシデント発生
その和みの光景に、1年前の3月を思い出す。
契約がずれ込み、3週間遅れの合流となったキャンプ。レンジャーズとの練習試合に出場したイチローは、現ロッテで当時マイナー契約だった左腕ブランドン・マンから頭部へ死球を受け、倒れ込んだ。マウンドでうずくまったままのマン――。
降板した後も試合を見つめていた傷心のマンは、近づいてきた当時マリナーズにいたアントニー鈴木氏(現巨人国際部)にクラブハウスへと導かれた。しばらくして戻ってきた左腕の表情から暗さは消えていた。聞けば、イチローから励ましの言葉を贈られたと言う。
「僕は大丈夫。気にしなくていいよ。それよりも今日のことが今後の投球に影響しないよう、恐れずに内角に投げてほしい」
その約2か月後、ドラフトから16年を経て、マンは33歳で念願のメジャーデビューを果たしている。
改造した打撃フォームにも安定感が出てきた中で見舞われた今回のアクシデント。今後の調整に影響が出る可能性もあるが、イチローはまたしても、当該投手の気持ちを思い取り、背中を押した。
野球は人間がするスポーツ――。
野球道を探究し続けるイチローの偉大さは技術だけではない。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)