高橋由伸氏、伝説の開幕戦初球アーチに隠された“秘話” 前夜に定めた「狙い」
「外スラかな」元巨人チーフスコアラー三井氏が由伸氏の背中を押す
29日からいよいよプロ野球が開幕する。開幕戦に特別な感情を抱く選手も多いが、ファンにとっても特別な一日となる。今から12年前の2007年3月30日。横浜(現DeNA)-巨人の開幕戦。高橋由伸氏の開幕戦先頭打者初球アーチが飛び出した夜をファンならば忘れることはできないだろう。
大観衆が見守る横浜スタジアム。高橋氏は原巨人の新・切り込み隊長を任された。スタイルはそのままでいい、と指揮官に言われたが、初めての重責を感じていた。
当時、巨人のスコアラーで、由伸氏から信頼の厚かった三井康浩氏は、開幕前夜、一緒に食事をしていた。焼き鳥をほおばりながら、何気ない会話をしているうちに、開幕戦の話になったという。
「(球種やコースは)何で来るかな……という話になりました。高橋選手は積極的に打ってくる印象を相手投手は持っていますので、見逃しでストライクを取りたいはず。なので外角への緩いカーブかスライダーかなと思いました」
左打者の外のボールゾーンからストライクのコースに入ってくる変化球でまずはストライクを取りに来ると読んだ。横浜の先発はエース三浦投手(DeNA投手コーチ)だった。
「私は『三浦投手だったら、外スラかな』と言いました。そうしたら、明日、それでいってみようかという結論になりました。その通りになり『はまった!』と思いましたね」
2人の予想通り、外から真ん中へ134キロのスライダーが来た。迷わず振り抜くと、打球は右中間スタンドへ突き刺ささった。高橋氏は打った瞬間に自然と右腕を高く突き上げていた。開幕戦の初回、それも表の攻撃の先頭打者アーチは過去6人。初球打ちでの一発はセ・リーグでは初の快挙だった。