「全打順本塁打」達成者は全員がパ・リーグ経験者 11人から見える傾向とは?

本塁打が絡む記録ながら、達成に必要なのは長打力だけではなく……

 以上の顔ぶれから傾向としてうかがえるのが、通算5盗塁の五十嵐氏を除いたすべての選手が一定の脚力を備えているという点だ。この中では盗塁数の少ない吉村選手も2009年に13盗塁を記録した俊足を備え、田中氏も動きの激しい遊撃手として長年活躍してきた実績を持つ。1番や2番として起用される選手には走力が求められるケースが多いことを考えれば、足の速さは全打順本塁打を達成するために必要な資質のひとつと言えそうだ。

 また、本塁打が絡む記録なだけに当然の話ではあるが、今回取り上げた11人中8人が通算100本塁打以上を記録した強打者である。3番目に少ない本塁打数の後藤氏も95本塁打とそのボーダーに近い数字であり、五十嵐氏(26本)と島内選手(昨季終了時点で44本)はこの中では異質な存在と言えそうだ。

 一方で、通算打率.234の五十嵐氏を除いた10人は打率.250台以上の通算打率を記録しており、通算1000本安打以上の選手が8人、通算1400本安打以上が6人と、本塁打の記録にもかかわらず「振り回すだけ」の選手は皆無といっていい。ここにはやはり、確実性の低い打者には上位打線を任せづらいという首脳陣の心理が働いていると考えるのが自然だろうか。

 そして、現役の島内選手と浅村選手を除くすべての選手が、実働13年以上と息の長い現役生活を送っていることも注目すべき点だ。若手時代、全盛期、キャリアの終盤と、自身のチーム内での立場が変わるにつれて、任される役割もまた変わってくるもの。絶不調でもない限りはチームの主力が8番や9番を打つことは現実的ではないだけに、役割に伴い打順も変遷を重ねていくのが自然だ。達成者の中にキャリアの長い選手が多い理由は、そういったところにもあるのではないだろうか。

長打、俊足、確実性、守備力など兼ね備えた選手が「全打順本塁打」を達成?

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