MLB欧州初開催の歴史的一戦は大盛況 「謎だらけなスポーツ」が成功した理由
ムーキー・ベッツとメーガン王妃がハグする場面も
6月30日に行われた第2戦も晴天。そして友好ムードも続く。
この日曜日の試合に16歳の娘と2人で観戦に訪れたカーディフ在住のマット・ジョンソンさんは、「ニューヨークに住んだ時にヤンキースファンになった。昨日の試合はすごかったね。今日もホームランが見たい」と笑顔で話してくれた。このコメントからもお分かりの通り、彼にもまたアメリカ在住歴があった。
また英国のロイヤルファミリーもこの友好ムードの背中を押した。
ご存知の通り、昨年ハリー王子と結婚したメーガン王妃はアメリカ人。そんなアメリカとの絆が強い夫妻がレッドソックスの控え室を訪れると、スーパースター・ムーキー・ベッツがメーガン王妃に「我々の祖先が同じだという話は聞いたことがありますか? 僕らは家族なんです」と話しかけた。すると王妃は「まあ!」と驚いて、すぐさまベッツをハグするというハプニングが飛び出した。
「ロンドンではいい発表会(ショーケース)ができたと思う。今回の試合で、多少なりとも野球の魅力を伝えることができたのではないか。観客のエネルギーはとどまることを知らなかった。昨日はほぼ5時間、今日も4時間以上の試合をしたが、観客からの反応が衰えることはなかった。この2試合は(英国における野球の浸透に)本当に大きな足跡を残し、これに参加できて本当に良かったと思っている」
2連勝という結果も出たこともあるだろうが、第2戦後のブーン監督の発言にはロンドンに対する親しみがにじんでいた。
こうして天気にも英国王室のサポートにも恵まれたロンドンシリーズは大盛況で幕を閉じた。8回には「スウィート・キャロライン」の大合唱。試合終了後には「ニューヨーク・ニューヨーク」が響いて、スタジアムにはメジャーの香りが充満した。
けれども残念ながら英メディアの報道を見ると、ハリー王子とメーガン王妃の訪問ばかりが大きく伝えられる始末。英大衆紙ザ・サンなどは、歴史的初戦の翌朝「ホットドックをはじめとする2000カロリーのアメリカ的なスナックセットが24ポンド(約3480円)だった」と報じ、試合内容に関しては皆無という記事を掲載していた。
しかし、アメリカとの繋がりがある英国人は多く、その交流の中で野球に魅せられたファンは確実に増えている。
冒頭、ラングドン記者は「英国人の95%が野球に関心がない」と言っているが、この国の人口は約6000万人。5%がファンになれば300万人の観客がいることになる。
とすれば95%の大多数の無知を相手にするメディアの懐疑的な報道はともかく、サッカーのシーズンオフの夏の風物詩として、MLBがロンドンに定着する可能性は大きいのではないか。
すでに来年にはカブスとカージナルスのロンドンシリーズが予定されているというが、潜在的ファンが300万人いるとするなら、2日間で12万人の観客を集客するのは造作ないはず。ロンドンで毎年MLBが見られるのは英国在住の日本人にも朗報、来年の成功も期待したい。
(森昌利 / Masatoshi Mori)