MLB欧州初開催の歴史的一戦は大盛況 「謎だらけなスポーツ」が成功した理由

MLB史上初の欧州開催となったロンドンスタジアムの様子【写真:Getty Images】
MLB史上初の欧州開催となったロンドンスタジアムの様子【写真:Getty Images】

地元は「謎だらけのスポーツに大観衆」と見出しを付けチケット完売に疑問符

「取材する私自身さえ、これまで1度しか野球の試合を見たことがない。英国人の95%が野球に関心がなく、基本的なルールさえ把握していないだろう。明日のスタンドはウェンブリーで行われたNFL戦と同じようになると思う。あの時は対戦チーム以外のユニフォームを着たファンが大勢訪れて、イベントやお祭りを楽しんでいるような雰囲気になったが、今回の試合もそんな感じになるはずだ。ヤンキースとレッドソックのファンだけではなく、英国内のMLBファンが集まる。確かにチケットは売り切れたが、だからと言って将来的に野球がクリケットに取って代わるとは到底考えられない」

 これはスカイスポーツの英国人記者、ジェレミー・ラングドン氏の言葉である。6月28日、MLBの歴史的な欧州初戦となったロンドンシリーズの前日に行われた両軍監督会見に出席していたところで話を聞いた。

 また同日の英高級紙「ガーディアン」には「謎だらけのスポーツに大観衆」という見出しが踊り、野球が12万枚のチケットをきれいにソールドアウトしたことに疑問符を打った。

 これは個人的な話で恐縮だが、実際、私の20数年に及ぶ英国在住歴の中で、英国人の口から野球に関してポジティブな言葉が発せられたのを聞いたことがない。彼らにとってはグラブを使わないクリケットこそ“男のスポーツ”なのだ。

 それに、これは住んでみて実感したことだが、英国人には若干、アメリカを見下すところがある。

 確かに歴史を紐解けば、かつてアメリカは大英帝国の植民地であった。その古い主従関係がひょっとしたら今も英国人の頭の中の片隅に刷り込まれているのかも知れないが、何かにつけてアメリカ文化を「歴史がない」「品がない」「拝金主義」と言ってけなす。

 野球もその例に漏れない。英国人にとってはあくまでクリケットが本線で、ベースボールはアメリカ的なけばけばしさと大味さが添加された亜流という認識だ。

 こうして一般的な英国人の野球観を綴ると、この国は“野球不毛国”という印象を与えてしまうかも知れないが、そんな国の首都でニューヨーク・ヤンキース対ボストン・レッドソックスという、MLBの中でも由緒正しき伝統の一戦が行われることになったのである。

スタジアムには各球団のユニホームを着たファンの姿があった

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