【あの夏の記憶】全治1年の重症、それをひた隠しに… 鷹・高橋純平を襲った2015年夏の悲劇
2015年夏に負った怪我は尾を引き続け、痛みがひいたのはプロ1年目の秋になってから…
肉離れが明るみになった後も、努めて軽症であるかのように振る舞った。少しでもチームに有利に働くようにと、痛む足を無理に動かした。いつでも、投げられる――。そう他校に思わせるためでもあった。準々決勝の中京高校戦も強行登板。1回2/3を投げたものの、力はまるで入らない。当然だった。「力の入らない状態でよければ、投げられはしましたけど…」。準決勝、マウンドに上がることなくチームは敗戦。甲子園出場はならなかった。
完治まで約1年かかるとされた大怪我。甲子園には出場できず、治療に専念できると思いきや、そうもいかなかった。高校日本代表に選出され「WBSC U-18ワールドカップ」に出場することになったのだ。左足に痛みの残るまま、4試合に登板。体をしっかりと休められるようになったのは、10月も近くなってからだった。
その年のドラフトで3球団競合の末にソフトバンクに入団することになった高橋。ただ、この夏に負った怪我はしばらく、彼を苦しめた。痛み、違和感はなかなか引かなかった。1年目の1月、新人合同自主トレ初日に左スネに痛みを発症し、いきなり離脱することになった。患部を庇うが余り、別の場所に負担がかかったのが原因だった。
「ほぼ1年間、足は痛かった。太ももが治りきっていなかったんです。実際に痛くなくなったのは、秋のキャンプになったくらいからでした」。2015年夏に負ったこの時の怪我は、医師の診断通り、完全に痛みが引くまで1年を要することになった。その後2年はフォームの試行錯誤を繰り返して悪戦苦闘した。迎えた、あの夏から4年が経った今。高橋は1軍のマウンドに立ち、18試合に登板。初勝利を含む2勝をマークし、防御率1.57と活躍している。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)