父はセンバツV主将、次男は今秋ドラフト候補 甲子園に愛された三兄弟の食卓
「一番うまくなる近道は好きになること」
最も変わったのは次男の史陽君だという。
「今までは喋っていても自分本位だったし、ワガママでした。最近はチームメイトのことや後輩の事を考えて生活しているなというのが見えてわかるので。ましてや本なんて読んだこともなかったのに1週間に1回、本を読んだり。全てが変わりました」
親元を離れ、下宿生活を送っていることももちろんあるだろうが、主将という立場になったことも大きかった。取材をしていても、先輩の後ろにくっついていた去年までとは違い、今は後輩が史陽君の後ろにくっついている。読んでいる本も野村克也さんや落合博満さんのものからリーダー論や経営に関する本へと変わっていった。
洋行さんは現在、奈良・王寺にあるバッティングセンター「ドームスタジアム」を経営。そこで野球教室もおこなっており、三兄弟だけでなく多くの子供たちを名門校に送り出している腕の持ち主だ。子どもが伸びる方法について尋ねると、
「偉そうなことを言うかもしれませんが、褒め続けることじゃないですか?すごいで!とか、声がよく出ていたで!とか良いところをみつけてあげる。あかんところ言っても、本人もわかっていますし、前に進めないと思うんで」
いいところを見つけてほめてあげるというのが一番だという。また、甲子園を目指す子どもたち自身には、
「一番うまくなる近道は好きになることだと思いますし、好きになって自分からこういう選手になりたいって思って練習すれば必ずうまくなると思うのでそういう気持ちをもって前向きにやってもらえればいいかと思います」
実際、黒川三兄弟は一度も野球が嫌だとかやめたいと口にしたことはない。野球が大好きなのだ。
頭の95%を野球が占めていると笑う洋行さん。「あって当たり前、やって当たり前、生活の一部です」と43歳にしてまさに“野球小僧”という言葉がぴったりだ。息子たちのうち誰か一人でもプロ野球選手になってほしいと、3人とも右利きなのにも関わらず、長男は右投右打、次男は右投左打、三男を左投左打に育てるといった気合の入りようだ。
「甲子園も15試合、見せてもらったんで、欲は言えないですけど、プロ野球選手になってほしいなぁとは思いますね。あと怜遠が1回でも甲子園で打席に立ってくれたら1番嬉しいかなと思います。(智辯和歌山と星稜が甲子園で対戦したら?)球場の真ん中に座ります(笑)」
まだまだ夢の途中……。息子たちへの期待を胸に、今日も球場に足を運ぶ。