東北福祉大・大塚監督が17年甲子園V右腕を抜擢した理由 「4、5、6番手の投手で…」
同級生からは抑えるたびに「ノーヒットノーランだぞー」
ブルペンで肩を作っていた同級生の左腕・三浦瑞樹(盛岡大付)は、抑えて戻るたびに「ノーヒットノーランだぞー」とわざわざベンチにやってきた。「そういうことを言った次の回って打たれるじゃないですか。言うなよ、と思ったんですけど(笑)。毎回、でかい声で言ってきて」と綱脇。そんなプレッシャーにも負けず、自分のピッチングを続けた。5回に味方の失策で完全試合はなくなり、6回には四球、7回には死球で走者を背負ったものの、一度もスコアボードの「H」ランプを灯さなかった。
「持ち味は全球種をどこにでも投げられること。すべての球種でストライクを取れたことがよかったです」
人生初のノーヒットノーラン。92球で仙台大を封じ、2015年以来となる明治神宮大会出場に貢献した。
3年夏の甲子園で優勝したが、同級生には全国からやってきた好投手がそろっていた。1年春のリーグ戦から登板を重ね、三浦や椋木蓮(2年・高川学園)は昨年の大学選手権でも神宮のマウンドに立った。「いつか、あの舞台に立ちたい」と思いながらも、大塚監督らが「今じゃないから」と将来を見据えた声がけをし続けてくれたことで「焦りはなかった」と感謝。「ダメな時もあったんですけど、そこで落ちるのではなく、先を見据えて頑張ろうと思った」と自分のペースで腕を磨いてきた。リーグ戦出場はわずか2試合だが、全国大会の切符がかかった大事な試合でその成果を発揮。大仕事をやってのけた。
出身は東京。神宮球場までは「チャリで15分」だが、これまでの野球人生でまだプレーしたことがない。「とにかく、力になれるように。少しでもチームの力になれるように頑張りたいです」。偉業達成の喜びもつかの間、気持ちは「投げてみたい」と憧れ続けた神宮のマウンドに向いていた。
(高橋昌江 / Masae Takahashi)