もうひとつの戦い「eBASEBALL」 巨人球団職員も常勝意識「負けるわけにはいかない」
原監督は選手の思い、感情を見ているが…「僕の場合は無慈悲です(笑)」
涙のドラフト指名を受けてから、報道されたこともあり、実際の巨人の選手からの見方も変わった。
「岡本(和真)選手が『僕の能力、大丈夫ですか?』と聞いてきました(笑)。7月までの能力では物足りないけど(月間9本塁打、打率.301だった)8月やそれ以降の成績が反映されたものがアップデートされるので、それを楽しみにしていると伝えました」
ペナントレースの戦いによって、ゲーム内の選手のデータは変化していく。実際にシーズンの巨人の戦い方も熟知しているため、選手起用も戦術も参考になる。坂本勇人内野手や丸佳浩外野手は頼りになるし、今年、最後まで悩みの種だった先発、リリーフ陣はeBASEBALLでも同様。今年で現役引退する阿部慎之助捕手やマシソン投手の存在は欠かせないという。ただ、原監督の野球とは異なる点がある。
「僕の場合は無慈悲です(笑)。実際の采配ではチームとしての意思を示すことはありますが、eスポーツでは1人で試合を動かすので、それをやる必要はないと思っています」
原監督は選手を信じて、打てなくてもチャンスを与えて最後まで打席立たせることもある。そこに感情が生まれるが、坂東さんの野球にはない。
「例えば下位打線の選手。1打席も立たないで、代打という起用があります。リーグは5イニング制と短い。早い回から勝負をかけていかないといけません。特には捕手は守備能力の高い小林選手をスタメンに考えていますが、大城選手は代打で出すと打撃の能力が上がるので、1打席目から代打で出したりします。ただ、小林選手の場合はゲーム内で“意外性”という特殊能力があり、場面によっては打力が上がるので、そのまま打席に入れることもありますね」
能力によって、臨機応変に対応していく。その点を理解した上でファンの方はご覧になっていただきたい。坂東さんの中で、11月3日のリーグ開幕に向けて、構想も出来上がってきた。実際に日本シリーズを戦った巨人のオーダーとスタメンはかなり違っていた。
「1番はセンター・丸選手です。一発もあるし、5イニング制なので、できれば3打席を立たせたい。2番はショート・坂本選手。丸選手が出て、2ランで一気に2得点なんて期待します。3番は一発が打てる魅力を持つレフトでゲレーロ選手。4番はアップデートに期待のサード・岡本選手。5番はファースト・阿部選手。能力を超えた働きをしてくれると思います。6番は亀井選手。ライトのポジションでもレーザービームで刺してくれます。7番は吉川尚選手をセカンドで使います。彼は抜群の守備範囲を持っているので。8番に先発投手の山口投手。9番にキャッチャー・小林選手、というオーダーです」
中継ぎは中川投手、抑えはデラロサ投手。当日までオーダーは変わるが、考え抜かれたラインナップでリーグ開幕戦に挑む。そして、目指すは来年1月に行われる日本シリーズ。ソフトバンクホークスとの対戦をイメージしている。
「ソフトバンクかライオンズがやっぱり来ると思う。実際のシリーズはソフトバンクに0勝4敗で負けてしまったので、eBASEBALLでは巨人が全勝で日本一になりたいと思います」
常勝軍団のプライドをかけた、もうひとつの戦いが始まる。
(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)