7年前の日本シリーズで危険球退場と死球 “因縁”の2人が描いた同じ「夢」
元日本ハムの多田野数人投手が元巨人の加藤健捕手の頭部付近に投げた球が物議 2人は今…
あの日本シリーズから7年が経った。マウンドと打席で戦い、騒動の渦中にいた2人はもう、それぞれの道を歩んでいる。しかし、運命はまた交錯した。同じ夢を持ちながら、野球と向き合っていた。
2012年、巨人ー日本ハムの日本シリーズ。4勝2敗でジャイアンツが日本一に輝いた。その出来事は札幌ドームでの第5戦で起きた。日本ハム・多田野数人投手が巨人・加藤健捕手の頭部付近のボールを投げた。加藤はその場で倒れこんだ。判定は死球となり、多田野は危険球退場。これが物議を呼んだ。
映像をよく見ると、ボールは当たっていない。当たったかのように見せたことに「演技」「騙した」などと、審判だけでなく、加藤にも批判の目が向けられた。
騙そうとしたわけではない。これは頭部に死球を浴びた人間にしかわからない恐怖という錯覚が引き起こした衝撃が要因だった。
加藤は18年間の現役生活の間、2度、頭部死球を浴び、担架で運ばれた。ヘルメットが割れたこともあった。2009年9月、故・木村拓也さんが緊急事態に捕手を務めて、ピンチを脱した試合も、その直前に加藤が頭部に死球を受けて退場していた。
現役引退後、この件に口を開いた加藤は当たっていないことを認め、日本ハムファン、そして多田野投手への謝罪の思いを口にしている。それは著書などでも明かしている。打席で倒れ、痛みがあるような仕草で一塁へ向かったのは、パニック状態の中、“強い衝撃”を体に感じたからだった。
「頭にボールが当たった時は、もう何が起きたかわからない状態です。(日本ハム戦の時も)同じように何が起きたかわかりませんでした。慌てて、バントの構えから、よけようとしたバットがヘルメットに当たってしまいました。目もつぶっていたので、それが頭にボールが当たったのかとあの瞬間は思ってしまいました」
気が動転していたため、その衝撃が死球を思わせた。勢いよくその場に倒れ込んだため、地面に体を強く打っていた。加藤の中では体のどこかにボールが当たった錯覚が生まれ、自分で認識する時間もなく、審判から死球を宣告された。痛みを感じながら、一塁へ向かうと、ブーイングが聞こえてきた。
ベンチに戻って映像を見ると、当たっていなかった。とはいえ、頂点を争う戦いをチームの一員としてやっている中で、自分がこの騒動について発言するわけにはいなかった。