NPBと似て非なる選出基準 3度目のMVPに輝いたトラウトの凄さ
僅差でブレグマンを抑えてMVP選出、2人の違いは…
従来の打撃タイトルで言えば、トラウトは盗塁王1回、打点王1回を獲得しただけ。しかし出塁率はここ4年連続で1位。WARは2012年から5年連続でリーグ1位、ここ2年も2位。そして2012年以降で3回目のMVPを獲得した。この間、エンゼルスは2014年に地区優勝しただけ。にもかかわらずトラウトは3回もMVP。いかにトラウトの評価が高いかがわかる。
今季のトラウトは、WARは8.3で2位。1位はリーグ優勝したアストロズのアレックス・ブレグマンの8.5。普通ならばブレグマンが選ばれるはずだが、記者投票ではブレグマン335.0ポイントに対しトラウト355.0ポイントと僅差でトラウトが選ばれた。
さらに詳細のデータを見てみると、トラウトがMVPに選ばれた理由が見えてくる。WARのデータは、攻撃面の指標であるoWAR(Offensive WAR)と守備面の指標であるdWAR(Defensive WAR)に分けることができる(oWAR+ dWAR=WARではない)。これで見ると
トラウト oWAR 8.3(1) dWAR 0.3(85)
ブレグマン oWAR 7.7(2) dWAR 1.2(19)
となる。WARでは異なるポジションの守備成績もポイント化されるが、外野手のdWARは、内野手や捕手よりも低くなる。トラウトは優秀な外野手だが、三塁手、遊撃手よりもポイントは低い。純粋な攻撃面だけの指標では、トラウトはブレグマンより明らかに上。僅差ながらトラウトが選出された。
こうしてみるとMLBのMVP投票は、NPBとは似て非なる基準で行われていることがわかる。NPBでは本塁打、打点、打率などの指標がいまだに重視されるが、MLBではWARなど全く新しい観点から選手が評価されているのだ。
(広尾晃 / Koh Hiroo)