「やっと打者と戦えるようになった」 ロッテ3年目右腕が解き放たれた“球速”の呪縛

インタビューに応じたロッテ・佐々木千隼【写真:佐藤直子】
インタビューに応じたロッテ・佐々木千隼【写真:佐藤直子】

16年ドラフト1位の佐々木千隼、思い描くストレートが投げられず…「なんで?と」

 プロ野球選手になって、3シーズンが過ぎた。

「自分が思い描いていたような成績が出せていなくて、自分の中でモヤモヤしたものが、この3年間ずっとあります。そこを脱せられるように、とは思っているんですけど……」

 この3年間を振り返る時、ロッテ佐々木千隼は少し声のトーンを落とした。表現するのが難しいモヤモヤが、胸の奥につっかえているのが良く分かる。佐々木をモヤモヤさせる原因は何か??。それは、大学時代に最速153キロを計測したストレートが鳴りを潜めてしまったことにある。

 エースだった桜美林大時代には、ストレートは何度も時速150キロに達した。だが、いざプロの門を叩き、マウンドに上がってみると勝手が違った。甘くない世界だと覚悟はしていたが、なぜか納得のいくストレートが投げられない。「投げられないっていうか出ない。なんで?と。そこから、1年目は速い球を投げることに囚われ過ぎて、自分で自分を許せるボーダーラインが高くなりすぎたのかもしれません」と振り返る。

 2016年のドラフト1位入団。「こんなもんかって思われるのは嫌じゃないですか」。焦る気持ちが「なぜ?」という思いに拍車をかけ、ピッチングは思い描く理想からどんどんかけ離れた。「結局、自分が自分にプレッシャーをかけているだけで、周りは別に何とも思っていなかったかもしれない。自分でハードルを上げて、自分で自分を悪くしていたんです」とバツが悪そうに話し、こう続けた。

「今から考えると、バカだな、と思いますね(笑)。もっと楽にやっていれば良かったのに」

 負のスパイラルの中でもがいた佐々木を変えたのは、2年目の2018年7月に受けた右肘手術だった。必然的にボールを投げられない状況に置かれ、少し広い視野を持って自分を見つめられるようになった。「いろいろ考える時間があった」中でたどり着いたのが、「球速が出ないなら、今、投げられる球で何とかしないといけない。今の球で最善を尽くそう」という「割り切り」だったという。

「自分を許せるようになったというか、これでやるしかないんだって割り切ることができた。そうなると、マウンド上でもちょっと余裕が生まれて視野が広がったんです。1年目はずっと自分と戦っている感じだったのが、やっと打者と戦えるようになったのかな。もちろん、ピッチャーである以上、速さは追い求めたい。でも、そこに囚われ過ぎないように」

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