5年連続Bクラスも若手台頭、山岡&山本に続く投手は? 19年のオリ投手陣を振り返る
先発挑戦初年度で初タイトル、山本由伸は世代代表投手へ
同様に自身初のタイトルである最優秀防御率(1.95)を獲得したのがプロ3年目、21歳の山本由伸投手だ。昨季は高卒2年目ながらもセットアッパーに定着し、平均150キロを超える力強い直球と、それに全く球速差がない140キロ台後半のカットボールで打者を圧倒。54試合に登板し、防御率2.89の好成績を残した。ただ、今季はかねてから自身が熱望していた「先発」に戦いの場を移した。
先発と中継ぎでは求められてくるものが大きく異なり、スタミナ面での不安も考えられたが、山本には無関係だった。直球、カットボールに加えてフォーク、カーブなどの精度も向上し、昨季(53イニング)を大きく上回る143イニングを投げ抜きながら、1イニングあたりに出した走者がたったの0.96人。先発転向した後に、支配力が増したと言えよう。今季は3度の登録抹消もあり白星には恵まれなかったが(8勝6敗)、先発で20試合に登板した事実は、来季のさらなる飛躍につながるはずだ。
山本と同い年であり、ともに先発陣で輝いたのが榊原翼投手。150キロを超える速球に加え、カーブ、スライダー、フォークを組み合わせた本格派で、高卒3年目とは思えない気迫あふれる投球が持ち味だ。今季は、育成出身の投手としては球団初となるプロ初勝利を4月に挙げるなど、昨季を大きく上回る13試合に登板した。特筆すべきはそのゲームメイク能力。先発で6イニング以上を投げ、かつ自責点3以内で抑えた「クオリティスタート(QS)」の回数は実に10回。割合で言えば26試合で20回(リーグ1位)のQSを記録したソフトバンク・千賀滉大投手に並ぶ数字だ。
勝敗は付かなかったものの、取り上げたい試合がある。6月19日の巨人戦、6回まで1失点とほぼ完璧な投球を見せて迎えた7回裏。憧れであり、対戦を夢見た阿部慎之助選手が代打でコールされた。阿部選手は右飛に抑えたものの、続く中島宏之内野手にまさかの同点弾を浴びてしまう。一つの夢をかなえると同時に、手厳しい「プロの洗礼」を浴びる結果になった。ただ、マウンド上で悔しさをにじませたその表情には高卒3年目の21歳の初々しさはなく、同点を許したプロとしての責任感が見られた。今季で阿部は現役を退いたが、榊原のプロ野球人生は始まったばかり。来季の活躍に期待せずにはいられない。