初対面の印象は?1番の思い出は? クロマティ氏×篠塚和典氏の特別対談(3)

タイムをかけて「ハラさん、あのボクサー犬買った?」

――今の巨人監督の原さんとの思い出で印象に残っていることは?

篠「(1981年に)自分の中では『今年から』って思いながら(原監督が)入ってきて(二塁から)控えに回ってしまったというのもあったんですけど、それが逆に自分の気持ちを奮い立たせてくれたというのもあります。でも、長嶋さんから電話で『腐るなよ。必ずチャンスは来るからしっかりやっておけ』と。そういう思いで1か月間やれた。その後に中畑さんが怪我をして(原監督が三塁に回って)それからずっと出られるようになったというのがあったので。(原監督が)ジャイアンツに入ってきた時に僕は1から10まで全部教えましたよ。(守備では)絶対に俺よりは上に行かないと思っていたから(笑)。抜かれそうな選手には教えないと思いますよ。自然と守備位置も変わっていって、しっかり落ち着いたなっていう感じはしますよね」

ク「短い話があります。ある試合で、ハラさんは3番打者で自分は4番打者でした。ハラさんは不振で打撃スランプでした。ハラさんの打席で一、三塁のチャンスでしたが、ハラさんの顔の様子がちょっとおかしい。これはダメだと思ったので、私がアンパイアにこう言いました。『タイム!』と。そして、『ハラさん、カムヒア!』と呼んだのです。ハラさんは驚いていましたが、そこはおかまいなしで呼びました。何を話したかといえば、『ハラさん、あのボクサー犬買った?』。全く(野球と)関係ない話題です。『君はボクサー犬が好きだけど、自分はシェパードの方が好きなんだ。どう?』と。私は彼のマインドを変えたかった。ハラさんの顔色も変わりました。『新しい犬買ったの?』と。ハラさんがちょっと落ち着いた様子で『ノー。犬は買ってないんだ』と答えたところで、『打席に戻っていいよ。頑張ってね』と伝えました。ハラさんは打席に戻りました。いきなりヒットです。そこから打ちまくりましたよ」

篠「原はボクサー犬を飼ってたからね。それも1つの手ですよね。我々もそうですけど、明日いいことがあるって想像しながら前の日にゲームしたり。ちょっとしたきっかけでチェンジマインドじゃないけど、そういうことは大事ですよね」

――最後に、当時と今のプロ野球に違いは感じますか?

ク「西武のアキヤマは大リーグ級の選手でした。エガワさんは大リーグ級の投手でした。ミスター・フォークボールのムラタさんも大リーグ級の選手でした。1984、85、86、87、88、89年は黄金期でした。たくさんスーパースターがいた。今、スーパースターはまぁまぁ。1人か2人くらい。(当時は)バース、カケフ、マユミ、オカダ、ブーマー、ムラタさん、エンドウ、キヌガサ、ヤマモトコウジ、西武にはたくさん……日本球界で最高の時代でした」

篠「そんなに変わりはないと思います。(今も)各チームにはスター選手もいますし、時代の流れと言っちゃえば年だなとなっちゃうかもしれませんけど(笑)。その年代をやってきた人はやっぱりそう思うし、今の年代の野球を見てる人は、あまり昔の野球は見てない人がいるから。両方見ている人は昔も面白かったけど、今の野球は面白いよっていう人もいるし。確かに野球自体の見方は変わってきてるのかなという気はしますけど。放送もそうですしね。いろんなテレビ局もBS、CSでもやっているので。我々のときは本当に地上波しか映ってなかったので、スターに会う機会もなかったと思います。雲の上(の存在)というか、そういう感じで思っていたのに、今は本当にファンサービスも色々やっているから、いつでもスターと会えちゃうというところがあるので、昔と今のスター選手の価値観が変わってきてる気はしますよね」

【動画】センパイだけどトモダチ… クロマティ氏が忘れられない篠塚氏への感謝とは

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