所属球団の成績には明白な傾向が 「シーズン最多得点」の選手が持つ価値とは?
過去の偉人たちが残したシーズン記録においても、その傾向は同じ?
ここからは、長いNPBの歴史において、とりわけ優れた得点数を記録した選手たちについても同様の考察を行っていきたい。1シーズンにおける得点数の、歴代トップ5の記録は以下の通りだ。(所属は記録達成当時)
1位 小鶴誠氏(1950年:松竹):143得点
チーム得点:908点(リーグ1位)
チーム順位:1位(8チーム中)(98勝35敗4分 勝率.737)
2位 タフィー・ローズ氏(2001年:近鉄):137得点
チーム得点:770点(リーグ1位)
チーム順位:1位(78勝60敗2分 勝率.565)
3位タイ 藤村富美男氏(1950年:阪神):130得点
チーム得点:766点(リーグ2位)
チーム順位:4位(8チーム中)(70勝67敗3分 勝率.511)
3位タイ 山田哲人選手(2018年:東京ヤクルト):130得点
チーム得点:658点(リーグ2位)
チーム順位:2位(75勝66敗2分 勝率.532)
5位: 別当薫氏(1949年:阪神):129得点
チーム得点:735点(リーグ1位)
チーム順位:6位(8チーム中)(65勝69敗3分 勝率.485)
以上のように、歴代の好記録の場合でも、所属チームの総得点はリーグ1位か2位を占めている。チーム順位も1位が2度、2位が1度、Aクラス入りが4度と優秀で、近年の成績と同様の傾向が出ている。やはり、どの時代においても、ずば抜けた得点数を記録した選手を擁するチームは、チーム成績、打線ともに良い状態にあるということが言えそうだ。
NPB歴代最高の記録を樹立した小鶴氏は、「水爆打線」と呼ばれた強力打線の主軸として、137試合で143得点と、試合数を上回る驚異的な得点ペースを記録。同年には歴代最多の161打点という大記録も達成しており、打率.355、51本塁打とその他の数字も高水準。その打棒は、まさに球史に残るものだった。歴代2位のローズ氏も当時のシーズン最多タイとなる55本塁打を記録し、打率.327、131打点と猛打を発揮。圧倒的な打撃力でリーグを席巻した「いてまえ打線」をけん引する大活躍を見せた。
藤村氏もNPB史上初のサイクルヒットを達成するなど、戦前から戦後にかけての阪神を支え、「初代ミスター・タイガース」と呼ばれた名選手。別当氏は1950年に岩本義行氏とともにNPB史上初のトリプルスリーを達成しており、偉大な名選手たちが名を連ねたランキングと言える。そんな中で、現役選手で唯一の歴代トップ5入りを果たしている山田の存在感は際立つところ。今後さらなる好結果を残し、伝説の領域に足を踏み入れる可能性もあるはずだ。
「得点」という指標は、選手自身の能力を計るにあたっては少なからず問題点があるものかもしれない。しかし、その選手のチームに対する貢献度の高さや、その選手が在籍するチームの打線や好不調を計るうえでは、少なからず参考にできる数字と言えるはずだ。来たるシーズンにおいても、そういった観点から、選手たちの得点数を眺めてみてはいかがだろうか。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)