鷹千賀が先発で球界最高、中日藤嶋は“規格外” 直球の球速と空振り率の関係を検証

球速がダウンしていた投手はどのような結果に?

 では逆に球速がダウンしていた投手たちはどのようなシーズンを送ったのだろうか。同じく2018-19年にそれぞれストレートを100球投げた投手で平均球速が最も遅くなっていたのは西武の野田昇吾だった。2018年に平均139.2キロを記録していたストレートは昨季平均134.0キロにまで低下。もともとストレートのスピードを武器とする投手ではなかったが、さらに遅くなってしまった。

19年にストレートの球速が大きく低下した投手【画像提供:DELTA】
19年にストレートの球速が大きく低下した投手【画像提供:DELTA】

 球速低下の影響もあってか野田は昨季、ストレートの空振り率が6.8%から1.4%に低下。5月には3回無失点に抑えた直後に、首脳陣との話し合いのもと2軍で再調整を決めたという報道もあった。大量失点を喫していたわけではなかったが、首脳陣はボールの威力低下を感じ取っていたのかもしれない。結局、2018年の58試合から昨季は23試合に登板数を減らしている。

 またこのように平均球速に変化が見られる場合、ストレートの球速にあわせてほかの球速も変化する場合が多い。例えば、昨季の野田はストレート平均-5.2キロに合わせ、スライダーの平均が-3.0キロ、シンカーの平均が-5.1キロとほかの球種でもスピードダウンを起こしている。球速の低下は打者からすればボールを見極める時間が長くなることを示す。見極める時間が長いほど打者には余裕が生まれるはずだ。こう考えると、投球は原則的にスピードがあるほうがよい。投手にとって打者に余裕を与えないのは非常に重要なことだ。

 ただこれは球種の改良などとはまた別の話だ。ある球種の曲がりを大きくするために球速を落とすといった判断が効果的になることは当然ありうる。ただその投手のベースとなる球速は速いに越したことはない。今オフも選手の自主トレの様子が数多く報じられ、その中には肉体改造を行う投手もいた。彼らは新シーズンにどのような姿を見せてくれるだろうか。

(DELTA)

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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