野村克也氏は「野球を言葉にする詩人」 13年間仕えた燕池山2軍監督が語る名将【前編】

ミーティングで紡ぐ言葉に驚嘆「野球を理論的に言葉に、野村さんにしかできない」

 池山氏は戦々恐々として同年のキャンプに臨んだが、ミーティングに驚かされたという。「最初は野球に関係ない話ばかり。『仕事の3大要素』とは、とかですよね。野球人である前に社会人であることを教えられた。選手を終えてからの人生の方が長いと……。これは書かないといけないとすぐに思ったんです。最初は書き写すので精一杯。後で清書して読み返していました」。

 日々書き写し、読み込むうちに少しずつ腑に落ちていったという。「野球を論理的に言葉にする。野村さんにしかできないことだと思います。改めてノートを読み返してみても、よくこういう言葉が出てくるなと……。詩人のような方だと思いますよ」

“詩人・野村克也”のタクトにのって池山氏らは躍動。92、93年にセ・リーグ2連覇を達成し、特に93年は難攻不落の森・西武に前年のリベンジを果たして日本一に輝く。「いつか野村さんが話していたことがある。『1992、93年が一番良かったな』って……」。

 意外にも選手時代、池山氏は野村氏に雷を落とされた経験はないという。「主力選手には気を使っていたと思いますね。僕らに聞こえるように周りの選手を怒っていることもありました」。一方で、直接褒められることも少なかった。「『ホンマ、よう打ったな』とかくらい。そういうところは口下手なんですよね」。

 1990年から野村氏と過ごした濃密な9年間。しかし、これで終わりではなかった。2006年。野村氏が球団創設2年目の楽天の監督に就任すると、池山氏は1軍打撃コーチとして仕えることになる。

(後編に続く)

(片倉尚文 / Naofumi Katakura)

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