“米国留学”と“自宅ブルペン”と…プロ入りを目指す18歳右腕の前代未聞の挑戦
「ここまでやっていただけて、プロにならないと逆に申し訳ない」
高校時代は「腕の振りが超弱いカーブと、投げ方が全く変わって球速も100キロ位しか出ない“カス”スライダーと、あとはフォークっぽいツーシーム」というレパートリーだったというが、現在はスライダー、カーブ、カットボール、ツーシームという球種を持ち、フォークも習得中。「変化球はまだまだ全然ですけど、マシにはなりました」と笑う。
「高校生の時は30球くらい投げて、最初の方はスピードが出て、最後のほうは遅くなる感じだったんですけど、今はコンスタントに出ます。高校のときは知らないうちに球速が落ちてたんですけど、今ならどこが疲れたから遅くなっているとか、どこが悪いからとか、なんとなくわかるようになってきました」
投手としての“地力”は間違いなくついてきている。さらに、米国に行くことで、精神面でも成長しているという。母・みどりさんは言う。
「(アメリカに行くまでは)全く会話のキャッチボールもできない子だったんです。話しかけてもアハハハと笑っているだけで、自分から話しかけることもできなかった。それが、去年の夏の大会で後輩たちの試合を観に行ったときに、自分から向こう(米国)のことをすごくアピールしていて、同級生の親は『アメリカって凄いな』と(笑)。
野球をやっても『俺が、俺が』じゃなくて『みんなと一緒にいたいから野球をやる』みたいな感じでした。小さいときからプロ野球選手になりたいなんて1回も聞いたことがなかった。本人は『大学に行こうと決めたときにプロになりたいと思った』と言ってましたけど、私に実際に『プロを目指そうと思っている』と言ったのは、アメリカに行くか行かないかくらいのときでした。一番ビックリしたのはうちの家族です。できないことは言わないタイプでしたけど、『プロ』という言葉が出たので、余程の覚悟なのかなと。かなり腹くくってるなと思ったんです」
両親が、挑戦を後押ししようと決意するには、十分な判断材料だったようだ。
IMGアカデミーには5月後半まで所属する予定。帰国後に「独立リーグのトライアウトを受けるのが一番いいかなと思っています」と本人は話す。もちろん、NPB入りも見据えている。野口氏から熱心な指導を受けたことで「ここまでやっていただけて、プロにならないと逆に申し訳ない」と思うようになったという。
“前代未聞”のサクセスストーリーへ――。「佐藤圭祐」の名前を覚えておいたほうがよさそうだ。