焼肉屋から解説者へ転身 元ロッテ藤田宗一氏を野球界に引き戻した2人の言葉

第1回WBCで日本代表として世界一を経験した藤田宗一氏【写真:荒川祐史】
第1回WBCで日本代表として世界一を経験した藤田宗一氏【写真:荒川祐史】

小中学生に野球を教える今、藤田氏が抱く新たな目標とは

 この2人の言葉が後押しとなり、2018年に焼き肉屋から解説者に“転身”。今では小中学生を対象とする野球塾でコーチも務めている。ここで子どもたちに伝えているのは、体の芯をしっかり作ることだ。

「今の選手は体が大きくても、すぐ怪我をする。それは芯がないからです。僕はこの体で14年間プロでやってきた。それはやっぱり体の芯があったからだと思うんです。子どもたちにはまず、体を大きくしなさいって言ってます。お父さんは野球をしていなくても速く投げられるでしょ。それは体が大きいから。だから、まずはお母さんが作ってくれたご飯を残さず食べようねって」

 将来的にはNPB球団でユニホームを着たいと願っているが、今は子どもたちに教えることに夢中だ。

「今年も独立リーグから監督のオファーもあったんですけど、今は子どもたちを見ていた方が楽しいなって。上手くなってくるのが、目に見えて分かるんですよ。急に上手くなった子に『練習してるのか?』って聞くと『ハイ!』ってうれしそうに言うんですよね。それがうれしいですし、楽しいです。プロ球団でコーチをするチャンスがあればいいなと思ってますけど、なかったらなかったで。それよりもいつか、教えている子どもたちがプロ野球選手になってくれたらうれしいですね。藤田に教えてもらってプロになりましたっていう子が出たら、そっちの方が逆にうれしいかもしれません」

 野球界に戻り、新たな夢が生まれたのも、あの2人のおかげかもしれない。

「2人に言われていなかったら、ずっと飲食やっていたと思います。もう1店舗くらい出していたかも。鹿取さんと榎の言葉は大きかったですね」

 自身がユニホームを着るのが先か、教え子がプロになるのが先か。藤田氏は新たな野球人生を歩み続けている。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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