盗塁阻止率より重要? 盗塁抑止力に優れる甲斐拓也と小林誠司の貢献

最も盗塁を抑止したバッテリーは広島の床田と會澤の組み合わせ

 ここまで捕手ごとに盗塁抑止力を見てきた。ただ、走者が盗塁を企図する際に注意を払うのは捕手だけではない。投手のクイックやけん制の技術も走者の判断に大きな影響を与えており、盗塁阻止は投手と捕手の共同作業と言われる。投手も含めた盗塁抑止評価を行いたいところだ。しかし、盗塁抑止における投手と捕手の責任を明確に分割するのは難しい。そこで、今回はあえて責任を切り分けずに、バッテリー単位でさきほどと同じように抑止力を評価してみよう。

2019年バッテリー単位の二塁盗塁抑止数【画像:DELTA】
2019年バッテリー単位の二塁盗塁抑止数【画像:DELTA】

 イラストは昨季のバッテリー単位の二塁盗塁企図抑止数上位5組と下位5組だ。まず上位から見ていこう。上位5組すべてが広島と西武のバッテリーとなった。1位の床田寛樹-會澤のバッテリーは、通常のバッテリーなら8.1回盗塁企図される状況でわずか2回しか走られることがなかった。6回分抑止に成功したと推定できる。2位の増田達至-森のバッテリーは1度も二塁盗塁を企図させず、一塁走者を釘付けにしていたようだ。

 さきほど抑止力でトップだった甲斐は、バッテリー単位になると5位以内にはおらず、8位になってようやく登場する。千賀滉大とのバッテリーで4.2回分企図を抑止。上位20組で見ると6組は甲斐が捕手を務めていたバッテリーだった。甲斐は組む投手に限らず安定して盗塁を抑止し、チーム全体の抑止力を底上げしていたようだ。

 ベスト10以内には、さきほど捕手個人の抑止数では下位にランクインされた清水優心(日本ハム)、中村がそれぞれランクインしている。それぞれ玉井大翔、梅野雄吾とのバッテリーで抑止力を発揮していた。盗塁抑止が捕手単体では決まらないことがわかる。

 下位に目を移そう。最も二塁企図を抑止できなかったのはテイラー・ヤングマン-炭谷銀仁朗のバッテリーとなった。平均的な捕手であれば4.3回しか走られないところで、12回も企図を許している。

 ほかにもクリス・ジョンソン-石原慶幸、ジョニー・バーベイト-清水など、下位には外国人投手とのバッテリーが目立つ。もちろんデービッド・ブキャナン-中村など、抑止数がプラスのバッテリーも存在したが、全体的に外国人投手を含むバッテリーは抑止力が低かった。走者を気にしすぎず、打者との勝負に集中する傾向があるのかもしれない。

(DELTA・八代久通)

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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