難病と闘う元オリックス捕手の第2の人生 ミットを包丁に持ち替えコロナ禍で奮闘中

1月に本格的なオープンも新型コロナウイルスの感染拡大が…

「引退したのが11月、12月15日にはプレオープンでした。ほとんど時間はなかったのですが、知り合いの焼き肉店で修業することになりました。事情を説明したら『この期間で、これだけ詰め込んで教えるから頑張って覚えろ』と言われて必死で修業しました。肉の部位を覚えるだけでも大変で、まだこんなにあるのか、と思いました。切り分けるのも技術が必要でしたが、もともと母親の手伝いで料理をしていたこともあったので、何とかついていけました」

 プレオープンに間に合わせ、テスト期間を経て1月13日には本格的なオープンとなった。

「肉をうまく切ろうとも思っていますが、それ以上においしいと思ってもらえるように包丁を握っています。開店当初から、店にはたくさんお客さんが来てくださいました。堺シュライクスの店だと知って、来てくださる方も多くて、野球の話で盛り上がりました。“おいしい”といってもらえると嬉しいですね」

 しかし、新型コロナウイルス禍によって、営業ができなくなる。

「店が開けられなくなって、どうしようと思いました。店のスタッフや夏凪代表とも相談をして、何とか乗り切ろうと、弁当の販売をすることにしました。応援してくださる方がたくさんいて、弁当もそれなりに売れました。『がんばってや』と励ましてくださるお客様もいて、何とか切り抜けることができました」

 5月に入り、大阪府ではアルコール類の販売が再開され、それとともに「焼肉しょう」も営業を再開した。イートイン、テイクアウトに加え、精肉販売の免許も取って、フル回転している。

「お客も徐々に戻ってきています。とはいってもソーシャルディスタンスを取る必要がありますから、フルでお客を入れることができませんし、営業的には厳しいですね。スタッフは僕も入れて5人。堺シュライクスの選手もバイトで入っています。彼らのためにもお店を成功させたいですね」

 中道氏は店を切り盛りするうえで大事なのは「言葉」だという。

「僕は、高校ではキャプテンを務め、大学でも副キャプテンでした。人の上に立つうえで大事なことは、言葉遣いだと思います。スタッフに『あれやって』というときでも言葉を変換して丁寧に指示をしようと思います。それだけで雰囲気も違ってきますし、人の動き方も違ってくると思います。今は、将来のことはあまり考えていませんが、とにかく店を軌道に乗せることが第一ですね」

 店の表には、オリックスの同僚選手などの応援の張り紙が張り出してある。中には中道氏が明治大学時代にバッテリーを組んだ同期の中日、柳裕也の名前もある。多くの仲間の声援を受けて、中道氏は第2のキャリアでの成功を目指す。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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