史上初3球団での最多勝に期待 楽天・涌井秀章が歩んできた“エース道”

ロッテ時代の14年に全球団勝利を達成した

「全12球団から勝利」という記録は、長いNPBの歴史でも18名しか達成していない希少なものだ。そして、その18名の中に含まれている。西武時代に自身の所属する西武を除く11球団から勝ち星を挙げていた右腕は、ロッテへの移籍1年目となった2014年に古巣からの白星を記録し、全12球団からの勝利を達成。パ・リーグの球団のみに在籍してこの記録を達成したのは、涌井が史上初だった。

 この事実が示す通り、シーズンごとに対戦チーム別の防御率に差異こそあれど、長いスパンで見て極端に苦手とする球団を作っていない。年間を通じて各球団との対戦を続けていくローテーション投手にとって、大きな苦手意識を持っている球団が存在しないということは、安定感を保つうえでも重要な要素といえる。

 多彩な球種を活かして相手打線に的を絞らせない投球術も、持ち味としている武器の一つだ。フォーク、チェンジアップ、スライダー、カットボール、カーブ、シュートと実戦レベルの球を数多く備えており、それでいて、2019年の最終登板となった9月24日の西武戦で球速150キロを記録しており、30歳を過ぎた現在でも速球の威力は健在。特定の球種に頼らずに投球を組み立てられる引き出しの多さは、その日の出来によって軸にする球を変えられるという点でも、先発投手に向いた特性と言える。

 精度の高いフィールディングや常に冷静なポーカーフェイスも含め、投球以外の面でも落ち着き払ったマウンドさばきを見せていた。そのため、投球の完成度の高さも相まって、若い頃から「ベテランのよう」と評されることも多かった。そして、2020年には新たな球種であるシンカーの習得にも取り組んでおり、実際にベテランの域に達しつつある現在もなお、現状に満足することなく新たな武器を模索し続けている。

昨季は18試合登板で2度の完投を記録している

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