「自分たちの2年半は確かにあった」 休部の元PL戦士が贈る高校球児たちへの言葉

PL学園で学んだことは今も生きている

 背番号1を手に入れるまでの2年半で学べたことが、今も生きていることがある。野球はチームスポーツであるということだ。当たり前のことかもしれないが、PL学園で過ごした時間が教えてくれた。

「辛いことがあっても、みんな同級生で乗り越えてきました。マウンドに立った時も、やっぱり自分勝手にピッチングするんじゃなくて、周りを見て、気遣えるようになったかなとは思います」

 自分自身が卒業した2年後に、母校の野球部は休部となった。練習に顔を出したくても、試合の応援もできない。大切なものが目の前から消えた。今年は全国の高校球児が、新型コロナウイルスの影響を受けてしまった。春夏の甲子園は中止、都道府県の大会も地域の独自大会となった。目の前から当たり前だったものが消えていった。

「僕たちが熱い思いで目指していた場所や大会がなくなってしまい、今の高校3年生にかける適切な言葉が見つかりません。すごく残念としか…。でも、PL学園が休部になった時も思ったのですが、こういうのは周りに理解を求めるものではないのかなと思います。自分たちにしかわからないもので、いいんじゃないかな、と」

 同情をしてほしいわけではない。頑張れと言われたいんじゃない。それぞれの生徒がこの現実と向き合って、前に進んでいくしかない。

「自分がPL学園で生活し、野球をしていた事はなくならないですし、これからも野球部が活動していなくても、PL学園自体はこれからも残っていくものです。僕たちが生活していた2年半は確かにありました。そこに嘘はありません」

 喜びも悲しみも、捉え方ひとつで、人生の大きな財産になる。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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