大野雄を菅野にぶつける、攻撃での奇襲…井端弘和氏に聞いた中日逆転Vへの策
井端氏の勝負所での極意「絶対にしてはいけない『配球の後追い』」
しかし、初球は外へのストレートだった。井端氏は面食らった。
「想定外の入り方でした。しかも、ストライク。かなり動揺しました。でも、ここで絶対にしてはいけないことは『配球の後追い』なんです」
レギュラーを獲り始めた頃、井端氏はシーズン打率よりも得点圏打率が極端に悪かったと言う。
「理由を突き詰めた結果、僕はチャンスで配球の後追いをしていたんです。狙い球を絞って打席に入る。でも、初球にそれが来ない。すると、次を読んで、新たな狙い球を決める。また、外れる。また、決め直す。結局、あれもこれも追いかけて凡退。これを繰り返していました。あくまで僕の経験からですが、得点圏では狙い球を変えないこと。追い込まれた後に狙い球と違うボールが来た時はファウルで逃げる。その技術は練習で鍛えました」
結果、2球目の外の変化球をセンター前に弾き返し、二塁から猛スピードで荒木が返ってきた。アライバの2人でもぎ取った、この1点が優勝を引き寄せたと言っても過言ではない。
「Bクラスが続いていますが、毎年良い所までは来ています。今年こそ山を乗り越えて欲しい。個人成績はどうでもいい。とにかく勝つこと。そこに全員が集中できるかどうか。淡々とプレーするのではなく、背中から殺気を感じるような姿を見たいですね」
ローテの再編、終盤の奇襲、チャンスの心得。修羅場を潜り抜けてきた勝負師の提案は聞くだけで手に汗握った。中日は今後も強いのか。最後に笑えるのか。シナリオの結末は秋に分かる。
(CBCアナウンサー 若狭敬一/ Keiichi Wakasa)
<プロフィール>
1975年9月1日岡山県倉敷市生まれ。1998年3月、名古屋大学経済学部卒業。同年4月、中部日本放送株式会社(現・株式会社CBCテレビ)にアナウンサーとして入社。テレビの情報番組の司会やレポーターを担当。また、ラジオの音楽番組のパーソナリティーとして1500組のアーティストにインタビュー。2004年、JNN系アノンシスト賞ラジオフリートーク部門優秀賞。2005年、2015年、同テレビフリートーク部門優秀賞受賞。2006年からはプロ野球の実況中継を担当。現在の担当番組は、テレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜12時54分~)「High FIVE!!」(毎週土曜17時00分~)、ラジオ「若狭敬一のスポ音」(毎週土曜12時20分~)「ドラ魂キング」(毎週金曜16時~)など。著書「サンドラのドラゴンズ論」(中日新聞社)。