「好きじゃないとできない」 川端友紀、女子野球の未来を繋ぐために下した決断

社会人チームで増した想い「憧れてくれる子どもたちに何かできないか」

 プロ野球チームから社会人チームへ活躍の舞台を移したこともまた、意識の変化を生んだ。高校生や大学生チームと試合や合同練習で交流し、刺激を受けることは多い。時にアドバイスを送ったり、自身の経験談を伝えたりすると、「すごく喜んでくれる選手も多いので、やり甲斐を感じます」という。

「プロと社会人では、もう全然違いますね。もちろん、選手として成長したい、試合で勝ちたいという目標は変わらないんですけど、何のためにプレーするかが少し変わりました。プロの時は、お金を払って見に来てくれるファンの方たちのためにやっていた。今ももちろん、応援してくれる方のためにプレーしますけど、それ以上に女子野球選手が目標にしてくれる存在であれるように野球をしている感じが強くなってきました。憧れてくれる子どもたちに何かできないか。そういうことがより大きな意味を持つようになりましたね」

 子どもたちの野球離れが叫ばれる近年、野球をプレーする小学生女子は増加しているといる報告もある。高校でも女子硬式野球部の数は増えているが、その間の中学では途端に女子野球チームは減ってしまう。

「女子の野球人口が増えているのは、本当にうれしいですね。高校ではどんどん野球部が増えて、環境は良くなっていると思います。ただ、中学生にとっての選択肢が本当に少なくて、男子と一緒のチームでプレーするか、遠くにあるクラブチームに通うのか。せっかく小学生で野球をする女の子が増えているのに、中学でやめてしまってはもったいない。本当は部活としてあればいいんですけど、課題はいろいろありますね」

 自身も野球を始めたのは小学生の時。途中ソフトボールに競技を変えながらも、31歳を迎えた今でも白球を追い続けている。

「私もずっと選手をやってきて今も続けていますけど、本当に長く続けてもらうことが一番。いろいろな形で女子野球界全体が広まっていってほしい。それが私の一番の想いです」

 一時は距離を置いた野球だが、好きな気持ちは以前より増している。

「好きじゃないと、ここまでできません(笑)。年をかさねても、まだまだ上を目指せる。それが私にとって野球をできる一番の魅力です。終わりがない。そこがすごくいいですね」

 大好きな女子野球を未来に繋ぐため、子どもたちから憧れられる存在であるため、今日もまたレベルアップを目指しながら野球を向き合う。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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