二刀流に興味持ったスカウトも…ドラ1候補右腕・伊藤大海“大学5年間”の成長
バットを持っても一級品「打撃練習を見せて欲しい」と言ったスカウトも
遠回りに見える1年間が、今の伊藤をつくりあげた。「原点」だと言う高校の施設で練習することも多かった。「高校で手伝ったり、教えたりすることは、自分のためにもなりました。高校生の時は自分が思っていることを言葉にする力がありませんでしたが、引き出しが増えました。力があっても、自分を説明できなければ意味がないと思うんです」と理論派としての基礎を養った。「あの1年がなければ、今どうなっていたか想像がつきません」と振り返る。
大学のリーグ戦では主に先発を担い、侍ジャパン大学代表ではクローザーを務めた。伊藤自身は「必要とされるところで頑張りたいです。何でもできるのが一番。自分にとっては、どちらも捨てがたい面白みがあります」と語る。大滝監督は「回転数が2300~2400あり、コントロールも良いから全日本では抑えになったと聞いています。先発することで力を抜くことも覚えましたし、使い勝手の良い即戦力投手になるでしょう」とプロでの活躍に太鼓判を押す。
投手ながら、中学、高校、大学でキャプテンを任される人間性も大きな魅力だ。「ピッチャーというのは、守っている時もみんなが見るポジション。僕は言葉よりも姿で引っ張るタイプで、私生活や姿勢の方が大事だと思っています」と話す。後輩にトレーニング方法や技術を惜しみなく伝え、後藤晟投手(2年、松本国際)は今秋のリーグ戦で4試合に先発して4勝を挙げ、防御率もリーグトップの0.30をマークするほどの成長を遂げた。
さらに伊藤は抜群の身体能力と野球センスの持ち主。「バッティングが大好き」という思いもあり、大学入学当初は二刀流プランもあった。2年秋のリーグ戦1週間前の練習試合にスライディングした際に左足首を骨折したこともあって実現しなかったが、左打席から鋭いスイングで柵越えを連発し、50メートル5秒8の俊足を誇る。「去年も最後の練習試合で5番DHで出たら、4打数4安打でした。今年の春先にも『打撃練習を見せてほしい』と言ってきたスカウトもいましたよ」と大滝監督は明かす。
26日のドラフト会議では、北海道の大学から初となる1位指名の期待がかかる。リーグ戦最終登板後に「北海道で生まれた人間として、北海道の地で頑張れたらなとは思っています」と地元の日本ハムへの思いも口にした伊藤。「縁があればというところですね」と運命の日を待つ。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)