球界に一石を投じる画期的な取り組み ポニーリーグが導入した子供を守る新ルール

時代とともに変化する指導の現場 清瀬武蔵野・八景監督「僕らも相当勉強しなければいけません」

 11日の試合でも、ネット裏の電光掲示版に投球数が表示されていたが、これもポニーリーグではおなじみの光景となり始めている。指導歴が長く、これまで約500人の子どもたちを次のレベルに送り出してきた清瀬武蔵野ポニーズの八景千秋監督も、こういった取り組みに賛同する1人だ。

「うちのチームでは、高校もしくはその上のレベルで、故障が原因で野球ができなくなった選手はゼロです。今年は新たに38人が入ってきましたが、その中に故障で大学野球を断念せざるを得なかったお父さんがいます。そのお父さんは『(自分の経験もある)だからポニーにした』と。チームでも10年前から、ある大学のスポーツ医学の先生に、綿密なメディカルチェックをしてもらっています」

 リーグの理念を受け、所属チームの意識も高まっているようだ。

 今回は、怒声や罵声のある指導や応援を行った指導者や保護者に対してイエローカードを出す試みも導入されたが、コロナ禍の影響もあり、大きな声での支持や声援が飛ぶことはなかった。

 その代わり、今の時代を象徴する場面も見られた。保護者の多くは試合中にスマートフォンを手に、アプリにスコアや成績を入力。その背景には、アンダー世代の指導現場でもデータやエビデンス(根拠・裏付け)が重視されている現状がある。八景監督は「みんながネットで情報を持つ時代。僕らも相当勉強しなければいけません」と話す。活動自粛期間中は、家庭でのトレーニングメニューを渡し、チーム方針や活動予定などはオンライン会議アプリでミーティングを行い、共有したという。

「大きな声を出してしか選手を動かせないんだったら、その指導者は能力がない、と自分で言っているようなもの。選手には裏付けをとって、しっかり説明する。そういう文化になっていると思います」と八景監督。時代の変化とともに、子どもの指導の在り方やサポートの形も変化している。「俺たちの時代は……」と、なかなか過去から抜け出せない指導者に気付きをもたらし、変わるきっかけを提供する試みが、ユース世代の野球では着々と進められていた。

(細野能功 / Yoshinori Hosono)

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