「ベンチに走った衝撃」は忘れない 楽天1位・早川隆久と投げあった夏

 高校日本代表でアジア王者になった島孝明、早川隆久、藤平尚真、高橋昂也(右から)【写真:本人提供】
高校日本代表でアジア王者になった島孝明、早川隆久、藤平尚真、高橋昂也(右から)【写真:本人提供】

木更津総合・早川先発に対して、東海大市原望洋は島ではなく、金久保が先発

 木更津総合が先攻、私たちが後攻で始まった試合ですが、私が先発ではなく、2年生の金久保投手が務めました。金久保投手の試合を作る能力は私より優れていましたし、これまでの試合も自分がリリーフに回り継投することが多かったので、ある意味、勝ちパターンとなっていました。オーダーに関しては監督が決めることですし、チーム全員の金久保投手に対する信頼も厚かったので、自分が先発しないことに関してその時は特に不満もありませんでした。

 ただ、これで最後になると分かっていたら、少し監督に進言しておけば良かったと今更ながら考えないこともないですが、当時の自分にそんな勇気は持ち合わせていませんでしたので、おそらく妄想に終わっていたと思います。

 評判通り、早川投手は初回から素晴らしい立ち上がりを見せ、あまりのレベルの高さに望洋ベンチに衝撃が走ったのを覚えています。前日の完投による疲労も一切見せず、むしろこの試合に合わせてきたかのような好調ぶりでした。劣らず金久保投手も相手打線を抑え、両者譲らずの展開となりハイスピードで試合は進んでいきました。

 試合が動いたのは3回表でした。木更津総合の打者が三塁打で出塁すると、続くバッターが犠牲フライを放ち先制を許しました。あっという間の出来事でしたが、その1点が今大会初失点であると同時に、私たちの高校野球人生に引導を渡す1点にもなりました。

 その後0行進が続き、7回途中で私に登板のチャンスが訪れました。リードされている場面でしたが、なんとか流れを持ってこようと集中力を最大限に高め臨みました。ブラスバンドの大声援が鳴り響く中、自分の役割を全うすべくただひたすら腕を振り、気づけば試合が終わっていました。早川投手は最後まで隙を見せることなく、5安打完封勝利。エースとしての意地やプライドをまじまじと見せつけられました。

 その後、高校日本代表でチームメートにもなりました。大学に進んでからも着実に努力を重ね、ますます手のつけられない投手へと成長しました。プロに入ってからも野球に対するその飽くなき欲求を絶やすことなく、私たち98年世代を代表する、ひいては日本を代表する選手となることを期待しています。

(島孝明 / Takaaki Shima)

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